Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:心不全

(S359)

電気的交互脈例における振り子様運動の検討

The relationship between electrical alternans and cardiac pendular motion.

辻 亜由美1, 西上 和宏2, 村上 未希子1, 山本 多美1, 西冨 恵美1, 早川 裕里1, 浪崎 秀洋1, 志水 秋一1, 富田 文子1, 小郷 美紀生1

Ayumi TSUJI1, Kazuhiro NISHIGAMI2, Mikiko MURAKAMI1, Tami YAMAMOTO1, Megumi NISHITOMI1, Yuri HAYAKAWA1, Hidehiro NAMISAKI1, Shuuichi SHIMIZU1, Ayako TOMITA1, Mikio OGOU1

1済生会熊本病院心血管エコー室, 2済生会熊本病院心臓血管センター

1Cardiovascular Laboratory, Saiseikai Kumamoto Hospital, 2Cardiovascular Center, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

【はじめに】
電気的交互脈とは,心電図の電位が心拍ごとに大小する現象をいい,心膜液貯留例に合併する発生頻度は稀な心電図所見である.当院で施行した経胸壁心エコーによって,電気的交互脈例における振り子様運動と心電図電位との関係を検討したので報告する.
【症例1】
35歳,女性.主訴は呼吸苦,顔面浮腫.現病歴として縦隔腫瘍を指摘され,悪性リンパ種の診断にて加療中であった.今回,呼吸苦,顔面浮腫,嘔気が出現し,これらの症状が増悪したため,当院外来を受診.外来受診時の心電図は洞調律で,心拍数125bpm.aVRを除く四肢誘導,および胸部誘導V3〜V6にかけて,陰性T波を認めた.また,電気的交互脈も認めた.胸部レントゲン写真ではCTR69%と心拡大を認めた.入院時の経胸壁心エコーでは,多量の心膜液貯留を認め,これに伴う心臓の振り子様運動および右室のcollapseを認めた.心嚢ドレナージが施行され,約600mlの心膜液が排除されたことにより呼吸苦と嘔気は速やかに改善した.細胞診の結果,心膜液貯留の原因は悪性リンパ腫の浸潤によるものと考えられた.心嚢ドレナージ後の心電図では,電気的交互脈が消失し,経胸壁心エコーでは心膜液が減少,振り子様運動も消失していた.
【症例2】
65歳,男性.主訴は呼吸苦.感冒症状,呼吸苦が出現し,症状が増悪したため,当院救急外来を受診.外来受診時の心電図は洞調律で,心拍数107bpm,電気的交互脈を認めた.胸部レントゲン写真ではCTR 63%と心拡大を認めた.入院時経胸壁心エコーでは,心膜液貯留を認め,これに伴い心臓の振り子様運動,右房・左房・右室のcollapseを認めた.心嚢ドレナージが施行され,約1040mlの血性心膜液が排除されたことにより,呼吸苦は速やかに改善した.細胞診,細胞表面マーカーの結果,悪性リンパ腫の浸潤による心膜液貯留と考えられた.心嚢ドレナージ後の心電図では電気的交互脈は消失しており,経胸壁心エコーでは心膜液が減少し,振り子様運動も消失していた.
【電気的交互脈例における振り子様運動と心電図電位との関係】
2例において,2心周期で胸側と背側とを移動する心臓の振り子様運動が確認された.心尖部はR波増高時には胸側に,減高時には背側に移動し,それぞれ拡張末期に最も体表に近づいていた.