酒巻 文子¹, 瀬尾 由広², 渥美 安紀子², 山本 昌良², 針村 佳江², 町野 智子², 川村 龍², 榎本 真美², 石津 智子², 青沼 和隆²

Fumiko SAKAMAKI¹, Yoshihiro SEO², Akiko ATSUMI², Masayoshi YAMAMOTO², Yoshie HARIMURA², Tomoko MACHINO², Ryou KAWAMURA², Mami ENOMOTO², Tomoko ISHIZU², Kazutaka AONUMA²

¹筑波大学附属病院検査部, ²筑波大学大学院人間総合科学研究科循環器内科

¹Department of Clinical Laboratory, Tsukuba University Hospital, ²Cardiovascular Division, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
スペックルトラッキングイメージングによる3次元（3D）の左室収縮動態の評価が可能となった．3Dエコーによる左室内dyssynchrony評価は局所容量変化による報告があるが［1］，3Dスペックルトラッキングイメージング（3DSTI）を用いた検討は報告されていない．本研究の目的は左室内dyssynchrony検出における，3DSTIの有用性について2Dスペックルトラッキングイメージング（2DSTI）と比較検討することである．
【対象および方法】
対象はLVEF45％以下の収縮不全症例22例（男性11例，63±14歳，QRS 178±41ms，EF 27±9％）．症例はQRS時間に基づいてnarrow QRS群（＜120ms）6例，wide QRS群（≧120ms）16例の2群に分類した．超音波診断装置は東芝社製Artida，探触子はPST-25SX 3D用プローべを用いた．STIのROIは左室心内膜面の弁輪部2点と心尖部1点の3点プロットによる自動トレース法を用い，ROI幅は自動設定とした．2D画像は左室基部，中部，心尖部の短軸3断面について同様の解析を行った．3Dおよび2D画像の左室16セグメントにおいて，心電図のR波から circumferential peak strain値までの時間を測定し，それらの標準偏差（SD）を求めて，dyssynchronyの指標とした（T-SD）．この際，健常群の平均+2SDをdyssynchronyの閾値と定義した．
【結果】
3DSTIによるT-SD（3D-TSD）は2DSTIによるT-SD（2D-TSD）と有意に相関し （r＝0.80，p＜0.001），3D-TSD と2D-TSD との間に有意差は認められなかった．Wide QRSおよびnarrow QRS群における3D-TSDおよび2D-TSDは，健常群に比べ両者とも有意に大であった（図）．健常群の解析からdyssynchronyの閾値は3D-TSDは 65.2 ms，2D-TSDは70.8msであった．これらの閾値からdyssynchronyの有無を判定すると，wide QRS群では3DSTI および2DSTI共に15例（94％）にdyssynchronyが検出された．一方，narrow QRS群では3DSTIで全例にdyssynchronyが認められたのに対し，2DSTIでは3例（50％）と有意に少なかった（p＝0.046）．
【結語】
3DSTIは2DSTIと同様にdyssynchronyが定量可能であった．またNarrow QRS症例におけるdyssynchronyの検出には3DSTIがより有用である可能性が示唆された．
【参考文献】
［1］S. Kapetanakis et al. Real-time three-dimensional echocardiography: A novel technique to quantify global left ventricular mechanical dyssynchrony. Circulation 2005; 112:992-1000.