Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
循環器:新手法1

(S354)

スペックルトラッキング法による左室収縮-拡張速度および捻れ-戻り速度関係の検討

Quantification of Contraction-Relaxation Coupling of Left Ventricular Myocardium Using Speckle-Tracking Echocardiography

土肥 薫1, 高村 武志2, 杉本 匡史3, 市川 和秀3, 中嶋 寛3, 田辺 正樹3, 山田 典一3, 宮原 眞敏3, 中村 真潮3, 伊藤 正明3

Kaoru DOHI1, Takeshi TAKAMURA2, Tadafumi SUGIMOTO3, Kazuhide ICHIKAWA3, Hiroshi NAKAJIMA3, Masaki TANABE3, Norikazu YAMADA3, Masatoshi MIYAHARA3, Mashio NAKAMURA3, Masaaki ITO3

1三重大学大学院臨床検査医学, 2伊賀市立上野総合市民病院内科, 3三重大学大学院循環器内科学

1Department of Molecular and Laboratory of Medicine, Mie University Graduate School of Medicine, 2Department of Internal Medicine, Ueno General Hospital, 3Department of Cardiology, Mie University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
左室機能低下は臨床的に拡張不全,収縮不全に分類されるが,一方で心筋繊維の短縮(収縮)と伸展(拡張)には強い相互関係があり,アクチン-ミオシンの結合・解離のみならず,タイチン分子のバネ機能が働くことにより,心筋繊維の短縮度が直後の伸展速度を規定することが知られている.我々は,生体レベルで心筋収縮率と拡張速度,および心筋の捻れと戻り速度に,バネ機能を反映する一定の関係が存在するのか,心エコー・スペックルトラッキング法を用いて検討した.
【方法】
正常心50例(Control:EF 65±6%),高血圧性心肥大50例(LVH:EF 61±8%),拡張型心筋症50例(DCM:EF 31±10%)で,左室における長軸,短軸,円周方向の心筋収縮率(peak systolic strain: PSS)と拡張速度(peak relaxation rate: PRR),および心筋の捻れ(torsion: T)と戻り速度(untwisting rate: UR)の関連を評価した.
【結果】
長軸,短軸方向ではPSS,PRRともにControlに比しLVHで障害され,さらにDCMでより著明に障害されていた.円周方向ではLVHでPSSは障害され,DCMではPSS,PRRともに著明に障害されていた.心筋の捻れ運動ではT,URとも LVHでは保たれていたが,DCMでは著明に障害されていた.Control,LVH,DCM全症例での検討では,長軸,短軸,円周方向,捻れ運動すべてにおいて収縮-拡張,および捻れ-戻り速度に有意な相関関係が認められ(図),特に心筋繊維走行に沿った収縮-拡張動態を反映する長軸方向,円周方向においては,収縮-拡張間に非常に強い相関が認められ(長軸:r = 0.87,p < 0.05,円周:r = 0.87,p < 0.05).さらに多変量解析では,長軸,円周方向ともにPSSはPRRの最も強い独立規定因子であったが,左室形態や左室駆出率,および心疾患の種類はPRRを規定しなかった.
【結論】
左室心筋における長軸,短軸,円周方向,および捻れ方向の収縮,拡張動態には,疾患による障害程度に差異が認められたが,一方で左室拡張速度および捻れの戻り速度は,それぞれ心筋収縮および捻れの度合いに強く規定され,このような収縮-拡張連関は,正常心から病的心まで連続性が認められた.以上より,エコー・スペックルトラッキング法を用いて定量評価された左室収縮-拡張連関は,左室心筋固有のバネ特性を強く反映しているものと考えられた.