Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:超音波顕微鏡

(S346)

三次元複合臓器構造体研究開発における高周波数超音波の応用

Application of High Frequency Ultrasound for Development of Three-dimensional Complex Organ Structures

西條 芳文1, 萩原 嘉廣2, 羽鳥 弘毅3, 小林 和人4, 穂積 直裕5, 田中 明6, 中村 憲正7, 星 和人8

Yoshifumi SAIJO1, Yoshihiro HAGIWARA2, Kouki HATORI3, Kazuto KOBAYASHI4, Naohiro HOZUMI5, Akira TANAKA6, Norimasa NAKAMURA7, Kazuto HOSHI8

1東北大学医工学研究科医用イメージング研究分野, 2東北大学医学系研究科, 3東北大学歯学研究科, 4本多電子株式会社メディカル事業部, 5愛知工業大学工学部電気工学科, 6福島大学共生システム理工学類, 7大阪大学医学系研究科, 8東京大学医学系研究科

1Biomedical Imaging Laboratory, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2Graduate School of Medical Sciences, Tohoku University, 3Graduate School of Dentistry, Tohoku University, 4Division of Medical Devices, Honda Electronics Co. Ltd., 5Department of Electrical Engineering, Aichi Institute of Technology, 6Faculty of Symbiotic Systems Science, Fukushima University, 7Graduate School of Medicine, Osaka University, 8Graduate School of Medicine, University of Tokyo

キーワード :

【目的】
外傷,悪性腫瘍の術後の大型欠損あるいは先天形態異常による複合組織欠損に対する再建の方法として皮膚・骨・軟骨の三次元複合臓器構造体を実現することは非常に重要である.臨床応用を念頭に置いた際に,再生医療技術によりこの構造体を作製するプロセスでの品質評価および生体への移植後の状態の評価の両方が重要であり,非侵襲的かつ様々な現場に対応可能なイメージング方法として高周波数超音波による方法は重要である.本研究では,高周波数超音波により皮膚・骨・軟骨の三次元構造を明らかにすることを研究目的とする.
【対象と方法】
高周波数超音波イメージングとして,従来型超音波音速顕微鏡(SAM)および新たに開発した三次元超音波顕微鏡(3D-US)を用いた.それぞれの機械走査および計測の基本システムは共通で,半導体スイッチングによるパルスを超音波振動子に入力し,受信超音波を高速デジタイザカードによりPCに入力した.2個のリニアモータによりXY方向に振動子を走査することで,SAMでは薄切した組織の音速分布,3D-USでは連続Bモード画像を再構築することで組織を可視化した.SAMによる観察では,ラットの顎関節軟骨,各種スキャフォールド上に培養した再生軟骨組織,スキャフォールドを用いない間葉系幹細胞由来の再生軟骨組織を対象とした.3D-USではマウス膝関節の骨・軟骨複合体および生体皮膚を観察した.
【結果と考察】
生体内の顎関節軟骨細胞は発達につれて0週から8週では音速が増加し8週と16週では優位差は認められなかった.したがって,軟骨の弾性は8週頃までに十分に成熟しているものと考えられた.また,再生軟骨組織については,スキャフォールドを用いた場合も用いない場合も,光学顕微鏡およびバイオメカニクス的計測で十分に熟成したと判断される場合には,正常軟骨と同様の音響的特性を示した.骨・軟骨複合体の3D-USによる観察では,軟骨の表面形状が立体的に観察可能で,将来的には変形性膝関節症の評価などにも応用することができると考えられた.また,軟骨の内部についても,輝度の強弱は同一部位をSAMで観察した場合の音速分布とほぼ一致しており,3D-USでも軟骨の成熟度が評価可能であると考えられた.皮膚の3D-US像では,真皮内の毛包や毛細血管などが観察可能で,移植組織への血流評価も可能と考えられた.
【結論】
高周波数超音波により再生医療で作製された三次元複合臓器構造体の形態評価が可能である.製作過程および移植後の再生組織の評価には超音波の非侵襲性,ポータビリティーが非常に大きなメリットになる.