Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:ドプラ法

(S346)

2次元自己相関法を用いた組織ドプラの検討

Investigation of tissue Doppler using two-dimensional autocorrelation estimator

久津 将則, 伊藤 安啓, 曹 景文

Masanori HISATSU, Yasuhiro ITO, Jing-Wen TSAO

アロカ株式会社メディカルシステム技術部

Medical System Engineering Dept., Aloka Co., Ltd.

キーワード :

【はじめに】
組織ドプライメージング(TDI) における速度値は,心筋機能の定量的評価にも用いられるため,血流ドプラに比べて高い精度が要求される.速度値vは,自己相関法によって推定されるドプラ偏移周波数fdから,v = c/2・fd / f(c:音速)と算出されるが,組織の散乱や減衰等の特性によって,受信瞬時周波数fは距離方向について変化している.この変化は,狭帯域送信(血流ドプラ)の場合では小さく,fを送信中心周波数f0で固定してよいが,組織ドプラ等の空間分解能を重視した広帯域送信の場合では大きく,vの算出精度が低下する.fも自己相関法から推定し,vの算出に用いれば,これを改善できる.そこで,Loupasらが提案した2次元自己相関法 [1][2] を組織ドプラに適用し,検討した.
【方法】
RMIファントムの上部に水を溜め,水中でプローブを上下運動させた.この時のRF信号(TDIモード)を取得し,PC上で解析した.この状況下では,ファントム実質部の真の速度値は,超音波ビーム上の全距離について一定である.解析では,2次元自己相関法によって求められたfdとfの相関関係について調べた.また,fdとfを求める際の窓幅の設定についても検討し,画像上における従来法(1次元自己相関法)との比較も行った.定量解析では,心筋の数フレームのデータを収集し,局所の運動速度をトラッキングし,従来法と比較した.
【結果とまとめ】
図1に,ファントム実質部で推定されたfとfdの相関関係を1ビームについて示す(距離90〜120mm).vが一定のため,fとfdは強い相関を示し,その傾きは2v/cとなる.同データから算出した速度vを図2に示す.従来法に比べ,2次元自己相関法では,vの変動が穏やかになった.画像上でもファントム実質部の速度が均一となった.
2次元自己相関法は速度値の推定精度を向上でき,定量的評価に有用である.ただし,信号雑音比が悪い場合,fdとfの相関が弱くなり,効果が小さくなるため,信号雑音比の良い組織ドプラに適している.
【参考文献】
[1] T. Loupas, et al., IEEE Trans. UFFC 42(4), pp.672-699, 1995.
[2] GF. Pinton, et al., IEEE Trans. UFFC 53(6), pp.1103-1116, 2006.