吉川 秀樹, 東 隆, 川畑 健一

Hideki YOSHIKAWA, Takashi AZUMA, Ken-Ichi KAWABATA

日立製作所中央研究所ライフサイエンス研究センタ

Central Research Laboratory, Hitachi Ltd.

キーワード :

【背景】
Power Doppler Imaging（PDI）は非侵襲に血管を可視化する技術として広く利用されている．しかしながら低速血流の感度が低く微細血管の描出が困難である問題がある．この問題に対し，複数の画像データを時間平均化処理するパーシステンス処理が広く利用されているが，体動下では血管位置が変化するため画質（空間分解能（SR）とコントラスト分解能（CR））の低下を招く．我々はこれまで体動補正パーシステンスの検討を進め，B画像や造影画像に適用して血管壁の層構造や造影血管の視認性向上を確認してきた［日本超音波医学会第78,79学術集会にて発表］．
【目的】
本報告の目的は，体動補正パーシステンスをPDIに適用したMotion-Compensated PDI （MC-PDI）を提案することである．体動による画質低下を抑制し，血管視認性が高いPD画像を提供する．体動をモータで模擬したファントム実験では体動が画質に与える影響を検証し，MC-PDIによる改善効果を定量的に評価する．更にin vivo実験によりMC-PDIの臨床的有用性を評価する．
【実験】
MC-PDIで使用する画像データはB画像とPD画像を同時に取得するDual-modeで取得する．取得した時系列の画像データに対し，B画像を用いて画像間の体動を計測し，その結果を同時相のPD画像に反映させてパーシステンスを行なう．ファントム実験ではtubeに流す血液模擬液を撮像対象とした．探触子をモータで動かしながら画像を取得し，モータスピード（V），パーシステンス枚数（N）と画質の関係を評価した．In vivo実験ではヒト腎臓を撮像対象としてMC-PDIの画質改善効果を評価した．
【結果】
ファントム実験により，VまたはNの増加に伴い劣化するSRとCRが体動補正により改善し，従来PDIに比べてV＝7mm/s，N＝8枚の場合でSRが約3倍，CRが約60％向上した．ヒト腎臓による従来PDIとMC-PDIの比較を図に示す．MC-PDI（c）ではパーシステンス未実施の画像（a）に比べて血管視認性が向上し，さらに従来PDI（b）に比べても抹消部の血管が鮮明に描出されており，SR, CR共に向上することが確認できた．
【結論】
MC-PDIはパーシステンス時の体動による画質劣化を効果的に抑制し，血管の視認性向上に有効である．