井上 真也, 須藤 政光, 国田 正徳, 赤羽 睦弘

Shinya INOUE, Masamitsu SUDO, Masanori KUNITA, Mutsuhiro AKAHANE

アロカ株式会社研究所

Research Laboratory, Aloka Co., Ltd.

キーワード :

【はじめに】
我々は超音波FMCW（Frequency Modulated Continuous Wave）ドプラ計測システムを提案している［1］［2］．基本構成をFig.1に示す．本方式では，正弦波で周波数変調した連続超音波を送受信し，対象までの距離に相当する伝播時間だけ遅延させた参照波と受信波との相関をとる．この処理により，関心領域内の血流速度情報を測定することができる．
今回は，本方式のSNR（Signal to Noise Ratio）を解析し，CWおよびPWドプラ方式と比較した結果について報告する．
【解析方法】
各方式における受信RF帯とベースバンドの信号および雑音を周波数領域（Fig.2）で定量的に比較した．
FMCW方式は，広帯域の受信信号を直交検波回路により，参照波と相関をとる．この処理により，ベースバンドドプラ信号はCW方式と同様に狭帯域信号が得られる．一方，PW方式では，ベースバンド信号のドプラ基本波成分のみを検出しているため，FMCWおよびCW方式に比べてSNRが劣化する．この劣化度合を算出するに当たり，各方式の送信平均電力，振動子開口，ビーム形状が等しいと仮定して解析を行った．
【結果および考察】
FMCW方式は，ベースバンドにおいてCW方式と同様に狭帯域信号が得られるため，両者のSNRは同等である．一方，PW方式のSNRは，パルス幅を1μs，PRFを5kHzとした場合， FMCWおよびCW方式に比べて23dB程度低い結果となった．
PW方式との開口やビーム形状の差異による，FMCWおよびCW方式におけるSNRの低下を考慮しても，PW方式に比べて14dB程度の優位差があると推測できた．
【まとめ】
FMCWドプラ計測システムは，血管の位置を特定しながら，PW方式では得られない微弱な血流速度情報を感度良く計測できる可能性が示された．
【参考文献】
［1］国田正徳他：J Med Ultrasonics, Vol.36 Supplement （2009）, S222
［2］井上真也他：J Med Ultrasonics, Vol.36 Supplement （2009）, S309