国田 正徳¹, 大洞 喜正²

Masanori KUNITA¹, Yoshimasa DAIDO²

¹アロカ株式会社研究所, ²金沢工業大学情報学部情報工学系

¹Laboratory, Aloka Co. Ltd.,, ²Dept. of Computer and Information Engineering, Kanazawa Institute of Technology

キーワード :

【はじめに】
超音波CWドプラ方式は，PWドプラ方式に比較して感度は高いが，位置情報は得られない．一方，PWドプラ方式は，位置情報は得られるが感度が低い．そこで，両者の特徴を備えた方式としてM系列変調超音波ドプラ速度計が提案されている〔1〕．しかし，この方式では，符号系列の繰り返し周波数とその高調波帯域にクラッタ電力が生じる．本報告では，クラッタを相殺できる新たな符号系列による連続波ドプラ測定方式を提案する．
【新符号系列の生成】
　1組の符号系列およびその相関を以下のように定義する．
　A_n＝（a₁,a₂,a₃,・・・a_n），B_n＝（b₁,b₂,b₃,・・・b_n）.
　〔A_n・A_n〕_i＝a₁a_i+1+a₂a_i+2+a₃a_i+3・・・+a_na_i,
　〔B_n・B_n〕_i＝b₁b_i+1+b₂b_i+2+b₃b_i+3・・・+b_nb_i,
　a,b : 1, or -1.
　符号系列は以下の条件を満足するように決定する．
　〔A_n・A_n〕_i+〔B_n・B_n〕_i＝0.
　n＝2の場合は，A₂＝（1,1），B₂＝（1,-1） がこの条件を満足する．2倍の長さの符号系列は以下の関係を用いて求められる．
　A₄＝（A₂,B₂），B₄＝（A₂,-B₂）.
　4ビット，8ビットの符号系列を以下に示す．
　A₄＝（1,1,1,-1），B₄＝（1,1,-1,1）,
　A₈＝（1,1,1,-1,1,1,-1,1），B₈＝（1,1,1,-1,-1,-1,1,-1）.
　新符号系列を採用することにより，クラッタ電力を相殺することが可能となる．
【新符号系列連続波ドプラ計測方式の特徴】
送信部では，新符号系列により変調した連続超音波を生体内に放射する．受信部では，受信信号と参照波との相関処理により，特定された深さからのドプラ信号を検出する．システムの基本構成を図1に，i＝8の場合の相関器出力を図2に示す．距離軸は組織の深さに相当し，参照波の遅延時間に対応している．図2は，参照波の遅延時間を深さd₀に調整した場合の出力であり，d₀における反射波が選択的に抽出される．さらに，A₈とB₈の相関器出力を加算すると，d₃とd₅における測定対象外の反射波が相殺され，クラッタ電力を低減できる．
【まとめ】
新たに連続超音波ドプラ方式を提案し，クラッタ電力が相殺されることを明らかにした．本方式によれば，CW方式と同様の感度で，距離が特定されたドプラ信号を検出できる．
【参考文献】
〔1〕大槻茂雄，奥島基良，“M系列変調超音波ドプラ速度計”，日本音響学会誌，29巻6号（1973）