吉光 喜太郎¹, 阿部 信隆², 荒井 修³, 仲本 秀和², 窪田 純², 佐々木 明², 鈴木 孝司¹, 村垣 善浩¹, 伊関 洋¹

Kitaro YOSHIMITSU¹, Nobutaka ABE², Osamu ARAI³, Hidekazu NAKAMOTO², Jun KUBOTA², Akira SASAKI², Takashi SUZUKI¹, Yoshihiro MURAGAKI¹, Hiroshi ISEKI¹

¹東京女子医科大学先端生命医科学研究所TWIns先端工学外科学分野, ²株式会社日立メディコ応用機器開発室, ³株式会社日立メディコUSシステム本部

¹Faculty of Advanced Techno-Surgery, Tokyo Women’s Medical University, ²Application Development Office, Hitachi Medical Corporation, ³Ultrasound Systems Division, Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【背景と目的】
高強度収束超音波（HIFU：High Intensity Focused Ultrasound）療法は，患者の皮膚を切開することなく，病変部を治療することが可能であり，患者への負担が非常に少ない低侵襲局所療法である．現在，東京女子医科大学において，インテリジェント動物手術室を構築し，疾患動物を対象としたHIFU治療システム開発研究を行なっているが，治療を実施するためには多くのスタッフを必要とし，治療時間も長く，運用上の課題が数多くある．そこで，本稿では，操作性，および安全性の向上を目的とした，収束超音波制御システムの開発を行なったので以下に報告する．
【方法】
より安全なHIFU治療を行なうために，波形発生装置および出力増幅器を制御するシステムを開発した．本システムは，以下の機能を有する．（1） 波形発生装置の制御機能（2） 出力増幅器の状態監視機能（3） 三色灯・ブザーによる状態通知機能（4）　出力のフェイルセーフ制御機能（4） 異常発生時のインターロック機能（5） 超音波診断装置の遠隔操作機能　（6）　ナビゲーションシステムとの通信機能（7） イネーブルスイッチおよび緊急停止スイッチなお，超音波診断装置はEUB-7500（Hitachi Medical Corp.）を使用した．
【結果および考察】
本システムを試作後，実際の照射実験による動作確認を行い，正常に動作することを確認した．これまでは，HIFU治療を施行する際に，術者，波形発生装置操作者，超音波診断装置操作者，ナビゲーションシステム操作者の計4名が最低でも必要であったが，本システムを導入することにより，術者の操作のみでこれまでと同様の運用が可能となった．また，これによりヒューマンエラーの発生頻度を低下することができた．HIFU出力中には，三色灯の点滅表示やブザー音の発生により，視覚・聴覚的に状態を通知し，術者やスタッフの注意喚起を促すことができた．波形発生装置や出力増幅器に異常が発生した場合や，緊急停止スイッチを押された場合には，HIFUトランスデューサと出力増幅器との物理的な接続を切断し，患者への不適切な照射が発生しないことを確認した．今後の課題としては，病変部位の治療精度向上，治療時間の短縮を目的とした，HIFU照射プローブ制御マニピュレータの開発が望まれる．
【結論】
HIFU制御システムを開発し，正常に機能することを確認した．また，本システムを用いるにより，術者の負担を軽減するとともに，操作性・安全性の向上を実現した．本研究は，独立行政法人　新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）からの委託研究として実施した．
1. 佐々木，荒井，阿部，仲本，窪田；2009日超医学術集会; 超音波診断装置とMRI装置のマルチモダリティー化検討　Ⅱ
2. 阿部，荒井，仲本，窪田，佐々木; 2009日超医学術集会; 超音波治療のためのマルチモダリティナビゲーションシステムの開発Ⅰ