Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:組織弾性(血管,心筋)

(S336)

血管を模擬したゴムチューブファントムの作製

Development of tube phantoms simulating arteries

宮地 幸哉1, 近藤 祐司1, 長谷川 英之2, 金井 浩3, 小形 幸代4, 伊東 紘一5

Yukiya MIYACHI1, Yuji KONDO1, Hideyuki HASEGAWA2, Hiroshi KANAI3, Yukiyo OGATA4, Kouichi ITOH5

1富士フイルム株式会社R&D統括本部メディカルシステム開発センター, 2東北大学大学院医工学研究科, 3東北大学大学院工学研究科, 4常陸大宮済生会病院循環器科, 5常陸大宮済生会病院内科

1Medical Systems Development Center, R&D Management Headquarters, FUJIFILM Corporation, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Graduate School of Engineering, Tohoku University, 4Cardiovascular Medicine, Hitachiomiya Saiseikai Hospital, 5Internal Medicine, Hitachiomiya Saiseikai Hospital

キーワード :

【はじめに】
血管壁の弾性は,動脈硬化の進展とともに変化することから,その計測方法について種々の検討が行われてきた.共著者等は,受信超音波の位相の解析より,心拍による微小な動脈壁のひずみ・弾性特性を局所ごとに計測する位相差トラッキング法を開発,改良してきた.[1][2] 近年,本手法を用いて,頚動脈の周方向の弾性率と虚血性心疾患の関係が調査された.動脈硬化危険因子のため頚動脈エコーを施行した82名 (男性52名,女性30名,平均年齢 : 71±12 歳)を,虚血性心疾患群とコントロール群に分け弾性率の平均値の比較検討がなされ,虚血性心疾患群で641.4±554.7kPa(mean±SD),コントロール群で336.6±188.4kPaであり,虚血性心疾患群で弾性率が有意に高いことが報告された.[3] 本研究では,低硬度シリコンゴムを材料に,血管を模擬したゴムチューブファントムを作製,本手法を用いて弾性率を測定し,人の血管と同程度の硬さのゴムチューブが作製できるか検討した.
【実験方法】
シリコンゴムに,音響反射源として散乱体(グラファイト粉末)を重量比2-5%で混入し,総頚動脈の血管径,内中膜複合体厚を参考に,内直径7mm,壁厚1mmのゴムチューブを作製した.このゴムチューブを循環系を模擬した水槽実験系にとりつけ,拍動流ポンプを用いてゴムチューブの内圧を変化させた.圧力センサにより計測した内圧変化と,位相差トラッキング法を用いて計測した内圧変化に伴う壁厚さの変化より,ゴムチューブの周方向の弾性率を算出した.測定は,富士フイルム社製超音波診断装置 FAZONE M,L10-5リニアプローブを用いて行った.ZONARE社製IQ scan research package 2008を用いて,IQデータを取得し,解析を行った.フレームレートは200Hz,超音波ビームの走査線数は33本であり,各走査線における弾性率測定値の平均値をゴムチューブの弾性率とした.
【実験結果】
JIS-A規格で,硬度0°〜10°のシリコンゴムを材料に,29kPa,107kPa,460kPa,888kPaのゴムチューブを作製することができた.
【結論】
今回の検討の結果,参考文献[3]の虚血性心疾患群,コントロール群の弾性率の平均値を含む広い範囲で,シリコンゴムチューブの弾性率を変化させることが可能なことがわかった.今後,材料や成形方法の微調整を行うことで,健常者や動脈硬化者の血管を模擬したゴムチューブファントムを作成できると考えられ,位相差トラッキング法による弾性率測定の定量評価に寄与することが期待される.
【参考文献】
[1] H. Kanai, et al. : IEEE Trans. UFFC, 43, 791, 1996.
[2] H. Hasegawa and H. Kanai: IEEE Trans. UFFC, 55, 1921, 2008.
[3] Y. Ogata, et al. : Proc. of Int’l Conf. on EUROSON, 85, 73, 2008.