Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:画像化新手法

(S334)

コンパウンド・インパルス送信波形を用いたBroadband Harmonicsについて

Broadband Harmonics of using the Compound Impulse transmission waveform

網野 和宏, 小菅 正之, 大西 隆之, 田中 一史, 宮本 一夫, 曹 景文

Kazuhiro AMINO, Masayuki KOSUGE, Takayuki OHNISHI, Kazufumi TANAKA, Kazuo MIYAMOTO, Jing-Wen TSAO

アロカ株式会社メディカルシステム技術部

Medical System Engineering Dept., ALOKA CO.,LTD.

キーワード :

【はじめに】
ティッシュ・ハーモニック・イメージングでは,分解能と感度の向上が要求される.我々はコンパウンド・インパルス送信によってBroadband Harmonicsを実現し,高い距離分解能と感度を両立した.サイドローブや多重エコーの少ないハーモニックス本来の効果に加え,より精細な描出力と深部までのペネトレーションが得られた.その原理は,インパルスのような広帯域送信によって,2次高調波とDC成分の周りに発生するベースバンド(0次)高調波の帯域が一層広くなって結合することで,図1に示すような超広帯域なハーモニックスを形成することである[1][2].但し,広帯域(短いパルス)送信では,深部感度が通常不足になるが,コンパウンド・インパルス送信波形を用いることで,この問題が解消される.本報では,この送信波形を示し,感度を大きく改善できることについて解説する.
【方法】
2次高調波エコーの振幅は,一般に基本波音圧の2乗に比例するため,感度を得るには送信パルスの振幅を高くすることが最も効率的であるが,送信回路では,高い電圧に耐える回路構成が必須となる.そこで,図2に示すように,インパルス状波形と変化が穏やかな台形状波形を合成加算したコンパウンド・インパルスを送信波形として振動子に与える.この時,ごく低周波の台形状波形が振動子の有限周波数帯域によってブロックされ,結果的に下駄を履かせた高振幅のインパルスだけが振動子を駆動することになる.よって,高耐圧性を持った特殊な高電圧送信回路を用いなくても,駆動インパルスの振幅を倍増でき,高いペネトレーションを実現できる.この送信波形は,好ましくは任意送信波形をプログラムできる送信器によって予めプログラムされ,送信される.
【結果】
コンパウンド・インパルス送信波形は,一方向に複数回送信の位相変調送受信法にも適用できる.これを用いたBroadband Harmonicsの効果(広帯域化と高感度の両立)はシミュレーションから確認され,また,Prosound α10 超音波診断装置の画像上においても,距離分解能と深部ペネトレーションが共に改善されたことも確認された.
【参考文献】
[1] 田中一史.INNERVISION 2008 ; 23(4):26-27.
[2] 田中一史.超音波検査技術2009 ; 34(3):325-333.