Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:画像化新手法

(S333)

チャープ波でB-mode像を生成するための簡易ビームフォーミング

Simple beamforming for B-mode imaging using chirp transmission

倉林 広和, 田中 直彦

Hirokazu KURABAYASHI, Naohiko TANAKA

芝浦工業大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻

Department of Electrical Engineering and Computer Science, Graduate School of Engineering,, Shibaura Institute of Technology,

キーワード :

【はじめに】
通常の超音波診断装置では,信号長の短い超音波パルスを送波しているが,安全性確保のため送波ピーク音圧の上限は制限される.そこで本研究では,パルスよりもピーク音圧が小さく,信号長の長いチャープ波を送波に用いるB-mode像生成法について検討をしている.今回はチャープ波を用いた簡易ビームフォーミングについて検討した.
【チャープ送波の問題点】
パルス波を送受波する場合,反射体までの距離と信号の伝搬時間が対応する.これに対しチャープ波を送受波する場合には,信号長がパルス波に比べ非常に長いため,1つの反射体からのエコー信号が時間軸上で広い範囲に分布し,伝搬時間と伝搬距離が対応しなくなる.従って,パルスを送受波する場合に適用される従来のビームフォーミングの方法を,そのままチャープ送受波に適用しても,適切なビームフォーミングはできないことが予想される.本来,ビームフォーミングの前にチャープ信号の圧縮処理を行うべきであるが,アレイを構成する全ての素子からの信号に対して,それぞれパルス圧縮が必要となるので,計算コストが大幅に増加することが予想される.
【検討】
今回はチャープ波を遅延加算した後にパルス圧縮を行う簡易ビームフォーミングで,どの程度の像が生成可能か検討した.計算機上に多数散乱体を配置し,各アレイの受波信号を合成した後,これを用いてB-mode像を生成した.サンプリング周波数40MHz,アレイ振動子の数32ch,アレイ振動子の配置間隔0.4mm,送信のビームフォーミングの焦点6cm,走査線の数200ライン,チャープ波は開始周波数1.5MHz,終了周波数2.5MHz,信号長200μsのリニアチャープを用い,雑音は加えていない.また,パルス波はチャープ波と振幅スペクトルが等しくなるように生成した.Fig.1はそれぞれの送波信号から生成されるB-mode像である.チャープ波の簡易ビームフォーミングによる方法でも,パルス波による方法とほぼ同程度の像が得られている.
【まとめ】
チャープ波を用いた簡易ビームフォーミングによる像生成の可能性について示した.今回示した結果は,ビームフォーミング後にパルス圧縮を行う方法でもある程度の像生成は可能であり,計算コストが抑えられることを示している.