Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:画像化新手法

(S332)

サテライトビューイメージングによる高画質化と高次元歪み計測の試み

Satellite-View Imaging for B-mode Image Improvement and High Dimendional Strain Measurement

山川 誠1, 布 樹輝3, 長永 兼一2, 及川 克哉2, 立山 二郎2, 染田 恭宏2, 椎名 毅3

Makoto YAMAKAWA1, Shuhui BU3, Kenichi NAGAE2, Katsuya OIKAWA2, Jiro TATEYAMA2, Yasuhiro SOMEDA2, Tsuyoshi SHIINA3

1京都大学先端医工学研究ユニット, 2キヤノン株式会社医用イメージング推進プロジェクト, 3京都大学医学研究科

1Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University, 2Medical Imaging Project, Canon Inc., 3Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
超音波診断装置はリアルタイムで簡便に生体内を画像化でき,また血流や組織弾性などの情報も得られるため現在臨床で広く用いられている.しかし,超音波Bモード像は他の診断装置の画像に比べコントラストが悪く,また血流計測や組織歪み計測も1次元方向の計測のみである.そこで,私たちは複数のプローブを用いて多方向から対象を計測するサテライトビューイメージングおよび仮想点音源を用いた送信ダイナミックフォーカスによりBモード像におけるコントラスト改善を試みた.また,サテライトビューイメージング法を用いることで2次元の歪み成分を精度よく推定し,より定量的な組織弾性特性評価を試みる.
【方法】
サテライトビューイメージングを行うため,私たちは2つのプローブを同一計測面内で自由に制御可能な計測システムを作成した.また,仮想点音源送信を用いたダイナミックフォーカスを行うため,128chの送信波形および遅延時間を自由に制御可能な送受信システムを作成した.まず,これらのシステムを用いて複数のワイヤーターゲットを計測し,2つのプローブの相対位置計測を行う.次に,各プローブにおいてサブ開口(32ch,約8.5mm)を用いた仮想点音源送信を行い,これにより得られるエコー信号をコンピュータ上で開口合成処理することで送信ダイナミックフォーカスを実現する.なお,仮想点音源の位置は空間分解能検証の結果をもとにプローブの内側サブ開口の1.5倍の位置に設定した.そして,この送受信ダイナミックフォーカスした信号の包絡線をとりlog圧縮した信号をプローブの相対位置情報をもとに合成することでサテライトビューイメージングを実現する.また,2次元変位(歪み)推定法としては,各プローブにおいて我々が以前開発した拡張複合自己相関法を用いてそれぞれビーム方向の変位成分を推定し,同じくプローブ相対位置情報をもとにベクトル合成することで2次元の変位ベクトルおよび2次元の歪み成分を得る.さらに,より定量的な組織弾性特性を評価するために2次元の歪み成分を用いた2次元歪み比を定義する.
【結果およびまとめ】
こんにゃくの中に直径4mmの寒天を埋め込んだファントムを用いた実験の結果,通常の1プローブ・固定焦点送信ではコントラストが13.6%であったのに対し,送信ダイナミックフォーカスを用いることで25.2%に向上し,さらにサテライトビューイメージングを用いることで34.3%に向上した.また,同じファントムを用いた2次元歪み推定実験結果,従来の1プローブでは横方向の歪み成分はほとんど計測できなかったのに対し,サテライトビューイメージング法を用いることで2次元の歪み成分を精度よく推定することができた.また,2次元歪み比を用いることで内包物が約7倍硬いと定量的に評価できた.ただし,サテライトビューイメージングを用いた歪み推定では計測領域が限られるため,今後は横方向変調法を用いた技術とサテライトビューイメージング技術を組み合わせることで高精度,広視野で2次元歪み計測が可能なシステムの開発を目指したい.