中村 亮一¹, 北角 権太郎², 長村 伸一², 須藤 政光³, 田辺 良子⁴, 勝池 康允², 望月 剛³, 千葉 敏雄⁵

Ryoichi NAKAMURA¹, Gontaro KITAZUMI², Shinichi NAGAMURA², Masamitsu SUDO³, Ryoko TANABE⁴, Yasumasa KATSUIKE², Takashi MOCHIZUKI³, Toshio CHIBA⁵

¹千葉大学大学院工学研究科人工システム科学専攻, ²株式会社イノベンチャーシー, ³アロカ株式会社研究所, ⁴アロカ株式会社メディカルシステム営業部, ⁵国立成育医療センター臨床研究開発部

¹Department of Artificial Systems Engineering, Graduate School of Engineering, Chiba University, ²Innoventure-C, Inc., ³Research Laboratory, ALOKA, Co., Ltd., ⁴Medical System Sales Dept., ALOKA, Co., Ltd., ⁵Department of Clinical Research and Development, National Center for Child Health and Development

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診断装置の技術進歩に伴い，周産期医療においても早期診断・治療が進められるようになっている．産科的超音波診断を代表とする出生前診断技術の著しい発展に伴い，新生児外科的疾患が胎児期に発見されるようになったが，これまでその多くは妊娠中断もしくは妊娠継続の上で分娩後に治療という選択肢に限られていた．胎児外科手術は，これらの二つに出生前治療という新たな選択肢を加えることにより，診断装置の技術進歩の恩恵をポジティブに利用することが可能となった．現在では尿路閉塞疾患に対するシャント術，胎児胸腔-羊水腔シャントチューブ留置術，双胎間輸血症候群に対する内視鏡的胎盤吻合血管レーザ焼灼術など高度先進医療に認められる治療法も登場し，今後の普及が期待されている．一方で胎児に対する外科的治療においては，母胎切開と胎児の羊水外・子宮外離脱を伴うその手法から，胎児・母胎双方に対し侵襲性が高く，また子宮内組織・胎児の脆弱性から難易度の高い手技となっているため，近年では内視鏡下手術手法によるより低侵襲な術式の研究が進められている．しかし内視鏡下での胎児外科手技は，内視鏡外科・胎児外科双方の特殊環境に起因する問題点を抱えている．細径内視鏡での術式では視野が狭く暗く，奥行き感覚が乏しく，触覚による組織内部構造の把握が不可能である．子宮内での作業は濁り・浮遊物の多い羊水内では元々視野が悪い上に，出血しやすい組織に囲まれ水に満たされた術野での不用意な組織損傷・出血による視野障害を引き起こす危険性を有している．この致命的な悪視野の問題を解決し安全な内視鏡下胎児外科手術を確立するためには，術野・対象の視覚的情報を増強し，また術具位置に自動対応した効果的な情報の提示をする手術支援装置の開発が必要である．我々は，脳神経外科・整形外科・耳鼻咽喉科等の領域で普及の進んでいる手術ナビゲーションシステムを応用し，診断画像情報と術具・治療対象の3次元位置情報を融合させることにより，内視鏡視野外の解剖学的情報・位置形状情報を医師に提示する手法の研究を行ってきた．これまでに，術中MRI誘導下脳腫瘍手術用に開発されたPRSナビゲーションシステムを応用し，4D超音波診断画像情報とこれにより作成した子宮内組織表面からの距離マップを利用したナビゲーションシステム，そして術中の高頻度の組織臓器形態情報変化への対応のための，術中4D超音波診断装置からの情報をリアルタイムに更新し誘導情報に反映するナビゲーションシステムを開発した．本報ではこれらの技術を融合させ，4D超音波画像を高速に処理し子宮内組織表面からの距離情報「近接覚」をリアルタイムに更新する新しいナビゲーションシステムについて報告する．