Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:音場計測

(S329)

MRIによる超音波音場検出の安定化

Stabilization of Ultrasound Field Detection by Using Magnetic Resonance Imaging

新田 尚隆, 本間 一弘

Naotaka NITTA, Kazuhiro HOMMA

(独)産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門

Institute for Human Science and Biomedical Engineering, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)

キーワード :

【目的】
ハイドロホンや光学的手法など用いた超音波音場計測は生体内計測への適用が難しく,現状では生体内超音波音場を無侵襲で可視化あるいは検出可能な手段は存在しない.そこでmotion sensitiveな可視化法であるMRIを用いて生体内での超音波音場が無侵襲で捉えられれば,例えばMRIガイド下集束超音波治療の高精度化への寄与が期待できる.一方,超音波による音響放射力は,加圧力として作用し組織内部で直流的な微小圧縮変位を生じさせるため,音場可視化に利用することが考えられる.この観点に基づき,これまでMRIを用いた音響放射力変位の検出を試みてきた1-3).しかしながら,音場検出の目的に対しては超音波強度を低く抑えることが望ましく,この場合,音響放射力による変位はさらに微小となるため,その検出にあたってはノイズの影響を大きく受けて不安定となる.MRI画像における高SNR化には複数画像信号の加算処理がよく行われるが,この場合撮像時間が増大し,超音波の照射時間もまた増大する懸念がある.そこで本研究では,撮像及び超音波照射の長時間化を抑制しつつ,変位検出を安定化させるための方法について,データ処理面から検討した.
【方法】
上記について計算機シミュレーションにより検討した.直径20mm,長さ60mmの円筒形モデルを2Tの静磁場内に配置し,その底面に円筒型超音波プローブ(5MHz,直径5mm)を接触させて,連続波送信を行いながらSE法による冠状断面撮像を行う状況を想定した(傾斜磁場強度:100 mT/m,FOV:80mm×80mm,matrix:128×128,1 pixel = 0.625 mm).微小変位に対する安定化度合いを評価するため,モデル内部に加わる音響放射力変位はプローブ表面で0.1μm,深部ほど線形に減少して底面で0μmになるように設定し,2次元フーリエ積分式を用いて作成したMRエコー信号には,最大振幅より30dB低い振幅を持つ白色雑音を加えた.変位検出においては,安定化のために,音響放射力印加前後のMR画像間において複素相関関数を算出し,その実部と虚部各々に対して局所平滑化処理を施した後,位相成分を算出してこれを変位に換算した.
【結果】
局所平滑化処理のためのカーネルサイズを,0x0(局所平滑化なし),3x3,5x5 ピクセルの3種類として,変位検出の安定化度合いを評価した.その結果,最大0.1μmの変位に対し,カーネルサイズが0x0ピクセルの場合は,有効な変位分布を観測することが困難であったが,3x3,5x5 ピクセルの場合は,有効な変位分布を観測でき,また,予想通りカーネルサイズが大きくなるほどノイズによる推定値分散が低下した.RMSEによる比較では3x3は0x0の33%に,5x5は0x0の19%にそれぞれ低下し,変位検出の安定化が可能であった.
【結語】
MRIによる超音波音場検出の安定化についてデータ処理面から検討した.今後は実験データを対象とした検討を行っていく.
【謝辞】
本研究の一部は文部科学省科学研究費(20700418)の補助を受けて行われた.
【文献】
1) N. Nitta et al., Int. J. CARS, pp.473, 2007.
2)新田尚隆他,第81回日本超音波医学会学術集会抄録集,pp.S281, 2008.
3) 新田尚隆他,第36回日本磁気共鳴医学会大会抄録集,pp.389, 2008.