Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S327)

光アシスト超音波速度変化イメージング法による内臓脂肪分布の描出

Detection of Visceral Fat Distribution by Optically Assisted Ultrasonic Velocity-Change Imaging Method

堀中 博道, 櫻井 大輔, 佐野 肇, 和田 健司, 松中 敏行

Hiromichi HORINAKA, Daisuke SAKURAI, Hajime SANO, Kenji WADA, Toshiyuki MATSUNAKA

大阪府立大学工学研究科電子物理工学分野

Department of Physics and Enginnering, Osaka Prefecture University

キーワード :

【序論】
我々は生体深部に適用できる「光アシスト超音波速度変化イメージング法」を提案し,実験を行ってきた.光アシスト超音波速度変化イメージング法は,光吸収領域に生じる温度変化による超音波の速度変化を画像化する方式である.超音波速度は伝搬する媒質の温度に敏感である.例えば,水中および脂肪中を伝播する超音波の温度による速度変化は,体温付近で,それぞれ,+2m/(s・℃),-4m/(s・℃)である.すなわち,水分が多く含まれる媒質では温度が上がると超音波速度が速くなるのに対し,脂肪が多い媒質では,超音波速度が遅くなり,超音波速度変化の極性が反転する.そこで,我々は本測定法を生体の脂肪分布の識別に適用することを考え,擬似生体試料内部の脂肪分布の画像化を行い,医療診断への可能性について検討を行った.
【実験】
検証実験のために2種類のファントムを作製した.ファントムAは,通常の餌で飼育されたウサギの肝臓の切片を鶏肉内に挿入して作製し,ファントムBは,高コレステロール,高脂肪食で飼育されたウサギの肝臓の切片を鶏肉内に挿入して作製した.半導体レーザー光(813nm)を拡散(0.3W/cm2)してファントムに照射し,光照射前後でアレイトランスデューサーのRF信号波形を検出し,超音波の速度変化画像を描出した.
【実験結果】
Fig.1の左側にファントムAの画像を示し,右側にファントムBの画像を示す.(a)は通常のBモード画像であり,(b)は超音波速度変化画像である.(a)のBモード画像では,特にグレイスケールの濃度の違いは見られない.(b)の超音波速度変化画像では,光加温による速度変化をグレイスケールで表示し,さらに,図中の破線に沿った速度変化のプロフィールを示している.Aの正常肝のファントムの画像では肝臓の挿入領域が黒く表示されている.プロフィールも超音波速度変化がプラスであることを示しており,水分の含有量が多いことが分かる.一方,Bの脂肪肝のファントムの画像では肝臓の挿入領域が白く表示されており,プロフィールも超音波速度変化がマイナスであることを示している.すなわち,肝臓切片の脂肪割合が多いことが識別できる.
【結論】
超音波速度変化画像は,脂肪の分布領域を明確に表しており,メタボリツクシンドロームの無侵襲診断方法としての可能性が期待できる.
【謝辞】
試料を提供頂きました大阪市立大学医学部の森川先生,小川先生に感謝いたします.