Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S327)

音速評価用ファントムの製作検討

Investigation of manufacturing the phantom for sound speed evaluation

勝山 公人1, 近藤 祐司2, 佐藤 智夫2, 宮地 幸哉2

Kimito KATSUYAMA1, Yuuji KONDOU2, Tomoo SATOU2, Yukiya MIYACHI2

1富士フイルム株式会社R&D統括本部 画像技術センター, 2富士フイルム株式会社R&D統括本部メディカル開発センター

1Imaging Technology Center, FUJIFILM Corporation, 2Medical Systems Development Center, FUJIFILM Corporation

キーワード :

【はじめに】
超音波診断が対象とする生体組織の音速は約1400〜1600m/secに分布しているが,装置が画像を生成するために用いる設定音速は一般的に1530m/sまたは1540m/s前後に固定されており,この音速ずれによって画質劣化することが知られている.本課題に対しFAZONE M(富士フイルム)に搭載されている音速補正機能は設定音速を段階的に変更し,生成された画像を解析することによって設定音速を対象の実際の音速に一致させ画質改善を図っている.我々は,設定音速が対象の実際の音速と異なる事による画質劣化や,FAZONE M音速補正機能の効果及び補正値の精度を定量的に評価するために,所望の音速を精度良く再現可能なファントムの製作手法を検討した.本報告では,考案した音速ファントム製作手法及び本製作手法の精度評価結果を報告する.
【製作手法】
ファントム媒質には寒天を用い,所望の音速値を再現するために以下の音速測定手法と音速調整手法を検討した.(1)音速測定手法 超音波送信素子と受信素子を固定した冶具を用いる.本冶具の送受信素子間に水を満たした後に超音波パルスを照射し受信した時刻Δt水を測定する.別途,実験式によって求めた水音速V水にΔt水を掛ける事で送受信素子間の距離Dを求める事ができる.次に同冶具に寒天を満たし同様の方法で送受信時刻Δt寒天を測定する.DをΔt寒天で割る事で寒天の音速V寒天を求める事ができる.本手法によれば機械的な寒天厚み測定による誤差を回避する事ができる.(2)音速調整手法 寒天に所定量のグリセリンを混入する事によって所望の音速値に調整する.
【精度評価結果】
温度24°Cの寒天700mlにグリセリンを40ml及び80ml混入時の音速測定値を図に示す.ここで送受信素子間距離を約17mmに固定し,超音波パルス周波数を6MHzに設定した.グリセリンの混入割合によって音速値が線形に変化する事が確認できた.また冶具の送受信素子間距離を変化させても,それによる測定誤差は2m/sec以内であった.以上から本手法によって0.1%精度で所望の音速ファントムを製作する事が可能となった.