利光 弘企¹, 山口 匡²

Koki TOSHIMITSU¹, Tadashi YAMAGUCHI²

¹千葉大学大学院融合科学研究科情報科学専攻, ²千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

¹Graduate School of Advanced Integration Science, Chiba University, ²Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【はじめに】
本研究では，エコー信号に対して3次元構造を有する空間フィルタを適用することによりスペックルノイズを低減させ，分散を基準としたしきい値処理により病変組織のみを描出する処理を提案している．3次元フィルタの形状は照射するビーム音場の性質を考慮したものであり，複数の計算機モデルおよび擬似生体試料を用いてスペックルの低減に適した形状を決定した．提案するフィルタを新犬山分類によりF0 〜 F4に分類された複数の正常，肝炎，肝硬変の臨床データに適用し，描出された非スペックル信号の3次元構造と病変進行度との関係性について検討を行なった．
【方法】
正常肝のように散乱体となる組織が均質かつ密に分布している組織からのエコー信号の振幅分布特性はレイリー分布で近似されることが知られている．本研究で提案しているFSET（fiber structure extraction technique）は上記の特性を利用し，処理を行う点を中心として，ある領域内で複雑な構造を有するフィルタを配置し，中心点の振幅値からフィルタ内の中心点以外の全点の平均振幅値を減算することで信号の分散を一定化した後に，しきい値処理を行なうことで非スペックル信号のみが描出される．臨床データは，コンベックスプローブを患者の体表面に沿って一定速度で動かし取得した100 frameのRFデータを使用した．使用した診断装置はTOSHIBA SSA-370A，送信周波数は2.0 MHz，受信周波数は4.0 MHzとした．このようにして得られた67症例に対し提案フィルタを用いてFSET処理を行い，3次元再構成結果から算出した一定領域の線維組織量と線維化ステージとの関係性をまとめる．
【結果・まとめ】
本研究で提案した3次元フィルタを臨床データに適用した結果，それぞれについて肝表面および内部において血管や線維の3次元構造を描出することができた．以前に二次元フィルタで同様の処理を行なった結果に比較して，線維構造の描出精度が向上しており，病変進行度との相関が向上した．
【参考文献】
Yamada, Ebara, Yamaguchi, et.al., Journal of Hepatology, Vol. 44, issue 1, 68-75 （2006.1）