Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S326)

RFエコー信号の振幅分布変化モデルに基づく肝炎線維化の定量評価

A quantitative estimation of liver fibrosis based on amplitude distribution model of RF echo signal

五十嵐 悠1, 江塚 大史2, 山口 匡3, 蜂屋 弘之1

Yu IGARASHI1, Hiroshi EZUKA2, Tadashi YAMAGUCHI3, Hiroyuki HACHIYA1

1東京工業大学大学院理工学研究科, 2千葉大学大学院融合科学研究科, 3千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2Graduate School of Advanced Integration Science, Chiba University, 3Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
われわれは,超音波定量診断手法確立の一環として,肝炎線維化の定量評価を目的としたエコー信号の解析手法の検討を行っている[1,2].エコー信号の振幅分布特性は媒質中の散乱体分布を反映するため,病変進行による組織性状の変化がエコーの振幅分布特性に強く影響を及ぼしている.正常肝からのエコー信号の振幅分布特性はレイリー分布で表現されるが,病変肝からのエコー信号の振幅分布特性は,レイリー分布から逸脱する.われわれは,病変肝からのRFエコー信号を正常肝・線維組織の組み合わせでモデル化することを提案している[3].今回,この振幅分布変化モデルを用いて,臨床データ(新犬山分類よるF0〜F4の病変肝データ)のRFエコー信号から線維化の定量評価を試みた結果を報告する.
【方法】
正常肝などの,散乱点となる組織が密かつ均一に分布している組織から得られるエコー信号の振幅分布特性はレイリー分布になる.病変が進行するとレイリー分布から逸脱する.ここで,病変肝のエコー信号の振幅分布を低分散のレイリー分布の正常肝組織と高分散のレイリー分布の線維組織との2種類から構成されるとモデル化し,その組み合わせにより,病変肝の振幅分布特性を表現する.そして,振幅分布モデルの線維組織の質と量にあたる2つの分布の分散比と混在率を観測データから定量的に求めるために,確率密度分布の歪度,尖度の2つの統計パラメータを評価パラメータとする.この評価パラメータから分散比・混在率を逆問題として求める.
【結果】
病変肝の振幅分布モデルを用いて歪度・尖度の2次元プロットから混在率・分散比を推定する.図は歪度・尖度と混在率・分散比の関係を示したものである.そして,この評価図中に臨床データの歪度・尖度をプロットしたところ,病変進行に伴い線維化の進行に対応する分散比の大きな領域に移動する傾向を確認できた.これにより,評価パラメータから病変肝の線維化を定量的に推定できる可能性が示された.先行報告[3]でのQ-Q確率プロットを用いた評価に比べ,今回使用したパラメータからの線維量の推定は,特に初期病変において安定であることが確認できた.今後,血管,脂肪化の影響などを検討し,臨床的な安定な評価を目指していく.
【参考文献】
[1] Yamaguchi, Jpn. J. Appl. Phys., 37, 3093-3096, 1998
[2] 江塚 他,日超医第81回学術集会,81-A032, 2008
[3] 五十嵐 他,日超医第82回学術集会,82-A001, 2009