Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状

(S324)

ICAを用いた肝エコー信号からの線維構造抽出における独立性評価関数の検討

Estimation of Evaluation Function of Independence for Fiber Structure Extraction from Liver Echo Signal using ICA

岩科 智之1, 山口 匡2

Tomoyuki IWASHINA1, Tadashi YAMAGUCHI2

1千葉大学大学院融合科学研究科, 2千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Advanced Integration Science, Chiba University, 2Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【はじめに】
これまで我々はエコー信号の振幅分布特性を統計的に解析し,肝臓病変の定量評価の実現を試みてきた.本研究では,正常組織と病変組織のエコー信号の独立性に着目し,線維化を生じた肝臓のエコー信号に独立成分分析(ICA)を基とした処理を施すことでスペックルノイズとそれ以外の信号成分とに分離し,病変組織の線維構造を抽出することを試みている.ICAは,信号源の独立性を仮定し,その仮定に基づいて分離を行う手法であり,独立性の判定基準となる評価関数によって結果が左右される.そこで,複数の評価関数における分離精度について検討することで医用超音波像に最適な評価関数を選択することを試みた.
【方法】
評価関数の種類を大別すると,キュムラントに関連した多項式を用いるものと信号源の密度関数に基づいた非多項式を用いるものがある.扱うデータの性質によって最適な評価関数を選択する必要があるが,いずれの多項式も一長一短の性質を有しており,優劣などは存在しない.今回,この評価関数による分離結果の違いを考察するために,線維化が進行した肝臓の臨床データに対して複数の評価関数を用いてICAを施した.ここで,ICAの性質上,分離対象となる病変肝のエコー信号に加えてもう一つエコー信号が必要となるため,病変肝と同質のスペックルノイズを有する正常肝モデルのエコー信号を付加入力として使用した.
【結果】
いずれの評価関数においてもスペックルノイズと線維構造とに分離されるが,各々の評価関数によって独立性の判定基準に変化が生じ,分離結果に違いが現れることが確認できた.臨床データにおける正常組織と線維組織のそれぞれからのエコー信号の独立性に比較して,臨床データと付加入力のそれぞれのスペックルノイズの独立性が低い場合に効果的な分離が達成されるが,音場や線維量などによってそれらの関係が複雑であることから,個々の臨床データで適当と思われる評価関数が異なったため,今後は構造が既知の計算機モデルや剖検試料を用いた対検討を行なう予定でいる.