Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:生体作用

(S324)

超音波で駆動された気泡が生体組織に与える影響:簡易生体モデルを用いた検討

Effect of ultrasonic-driven bubbles on living tissue: investigation using simple model of tissue

吉田 憲司1, 小畑 和也1, 柴山 優花1, 吉川 泰甫2, 塚本 哲3, 牛田 多加志3, 渡辺 好章1

Kenji YOSHIDA1, Kazuya OBATA1, Yuka SHIBAYAMA1, Taisuke YOSHIKAWA2, Akira TSUKAMOTO3, Takashi USHIDA3, Yoshiaki WATANABE1

1同志社大学生命医科学研究科, 2同志社大学工学研究科, 3東京大学医学系研究科附属疾患生命工学センター

1Faculty of Life and Medical Sciences, Doshisha University, 2Faculty of Engineering, Doshisha University, 3Center for Disease Biology and Integrative Medicine, Faculty of Medicine, University of Tokyo

キーワード :

【目的】
近年の超音波医療技術では,超音波と微小気泡の相互作用が利用されることが多い.超音波で駆動された微小気泡がその近傍の生体組織に与える影響を明確に理解することが,応用技術の更なる発展や安全性を検討する上での技術課題となる.先行研究では,微小気泡の挙動が実際の生体応用時とは大きく異なる条件において観測され(生体とは弾性が大きく異なるガラス上での挙動観測),それが細胞に損傷を与えることが示されている.本研究の目的は,先行研究とは異なりゲル上に細胞を培養した擬似生体モデルを作成し,より実際の生体応用時に近い状況において,気泡の影響を検証することである.
【方法】
ゼラチン上にイヌ腎臓上皮細胞を単層培養することで,簡易の擬似生体サンプルを作成した.気泡が生体に与える影響を検討するため,擬似生体サンプル上のマイクロバブルの挙動観測及び細胞の生死判定を行った.擬似生体サンプルを生理食塩水で満たされた円筒容器に挿入し,単一の気泡をサンプル表面に付着させる.円筒容器にはランジュバン振動子が接着されており,振動子から中心周波数27kHzの超音波が照射される.気泡の共振半径(周波数27kHzでは,約100μm)に着目し,その半径を75〜105μmの範囲で変化させ,気泡挙動を高速度ビデオカメラにより観測した.超音波照射後に,光学顕微鏡により擬似生体サンプルの表面状態を観察し,さらに死細胞及び生細胞を蛍光染色することで細胞の生死判定を行った.
【結論】
高速度ビデオカメラによる挙動観測結果において,気泡の膨張・収縮運動が擬似生体サンプル表面を押し込む(膨張時)または引っ張る(収縮時)様子が確認できた.この結果は,超音波で駆動された気泡がサンプル表面に力を加えたことを明確に示している.超音波照射後の生体模擬サンプル表面の顕微鏡観察及び細胞の生死判定から,細胞がゼラチンゲルから剥離している場合や細胞の剥離は無いが細胞が死滅している場合が確認された[Fig.1(a)及び(b)参照].細胞の剥離現象は,気泡半径が共振半径に近い場合に顕著に観測された.気泡を生体模擬サンプルに付着させない場合においては[Fig.1(c)参照],上記の様な現象は観測されなかった.これらの結果は,実際の生体応用に近い状況において,気泡が生体組織に損傷を与える可能性があることを示唆している.