Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
基礎:生体作用

(S323)

超音波照射による期外収縮発生に伴う心筋細胞内Caイオン濃度変化の観察

Observation of changes in intracellular Ca2+ concentration of cardiac myocytes during ventricular premature contractions generated by exposure to pulsed ultrasound

山本 将也, 白 冰, 工藤 信樹, 清水 孝一

Masaya YAMAMOTO, Bing BAI, Nobuki KUDO, Koichi SHIMIZU

北海道大学大学院情報科学研究科人間情報工学研究室

Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University

キーワード :

【はじめに】
我々は,心コントラストエコーの際に発生頻度が増加すると言われている心臓の期外収縮に関して研究を行っている.前回の報告では光学顕微鏡で位相差観察した培養心筋の拍動画像を基に拍動のタイミングを検出し,これを基準とする超音波の照射時相と期外収縮の発生の関連について報告した[1].今回は,より本質的に拍動を司る信号と考えられる細胞内Caイオンの濃度変化に着目し,これを基準として照射時相に関する検討を行った結果を報告する.
【方法】
ラット新生仔から単離した心室筋細胞をカバーガラス上で1層に培養し,自律的な拍動が再開された後に実験に用いた.今回の実験では微小気泡を加えておらず,中心周波数1 MHz,波数3波,最大負圧1.1 MPaのパルス超音波のみを照射した.Caイオン濃度の測定には蛍光染料Fluo-4を用いた.従来の実験システムでは,計測可能な蛍光強度を得るために強い励起光を照射する必要があり,退色が激しく長時間観察が不可能という問題があった.そこで今回は,image intensifier (Nac Image Technology,ILS-2)を用い,微弱な蛍光を増強することによって,Caイオンの濃度変化の連続観察を実現した.
【結果および検討】
拍動する培養心筋細胞に,収縮開始からの時間遅れを0から少しずつ増やしながら超音波を照射すると,時間遅れがある時間閾値を超えて初めて期外収縮が発生する.図1に,同一細胞について位相差像とCaイオン蛍光像の2つの画像から拍動を表す曲線を求め,それぞれを基準に期外収縮発生の時間閾値を調べた結果を示す.同一細胞の時間閾値の測定値は再現性が高いので,位相差像とCaイオン蛍光強度から求めた2つの拍動曲線は図のようにずれていることが確認された.また,各曲線の立ち上がり位置を収縮開始点として求めた時間閾値は,位相差像の場合では約320 ms,Caイオンの場合では約230 msとなり,Caイオンの場合の時間閾値が一般的な心筋の不応期長さにより近い値となった.これらの結果は,Caイオンに着目することの妥当性を裏付けるものと考えられる.
【まとめ】
蛍光染料を用いてCaイオン濃度を可視化することにより,心筋の拍動をより直接的に非接触で測定できることが確認できた.今後この手法を用いて,微小気泡存在下でパルス超音波が心筋拍動に与える影響について検討する.
【参考文献】
1.山本他,日超医基礎技術研究会資料,2009(2):28-33.