Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S317)

転移性膵癌のEUS像およびEUS-FNABの検討

Investigation of EUS findings and EUS-FNAB utility for metastatic pancreas cancer

肱岡 範1, 原 和生1, 澤木 明1, 河合 宏紀2, 丹羽 康正2, 山雄 健次1

Susumu HIJIOKA1, Kazuo HARA1, Akira SAWAKI1, Hiroki KAWAI2, Yasumasa NIWA2, Kenji YAMAO1

1愛知県がんセンター中央病院消化器内科, 2愛知県がんセンター中央病院内視鏡部

1Gastroenterology, Aichi Cancer Center Hospital, 2Endoscopy, Aichi Cancer Center Hospital

キーワード :

【はじめに】
膵腫瘤性病変の多くは膵癌,膵内分泌腫瘍もしくは腫瘤形成性膵炎であるが,転移性膵癌も稀ながらその鑑別疾患の一つとして挙げられる.転移性膵癌は,様々な臓器および癌腫からの転移であるため,その所見は多岐にわたり診断は困難な事も多い.これまで,転移性膵癌の超音波超音波(EUS)所見および転移性膵癌に対する超音波内視鏡下穿刺吸引組織診(EUS-FNAB)の有用性に関する検討例は極めて少ない.今回我々は,当院でEUSを施行した転移性膵癌に対し,通常型膵癌とのEUS所見の比較,およびEUS-FNABの有用性につき検討した.
【対象および方法】
対象は1998年〜2009.12月までに当科にてEUSを施行し,EUS-FNAB(14例)もしくは外科的切除(11例;重複あり)にて確定診断がなしえた転移性膵癌患者21名.使用装置は,主に電子コンベックス型超音波内視鏡(GF-UCT240 ; Olympus)を超音波診断装置(ProSound α10またはSSD5500; Aloka)に接続して観察した.平均年齢は60.1±13.3歳,男女比は10:11であった.1) 転移性膵癌 (n=21)と通常型膵癌 (n=50)のEUS像の比較 2) 転移性膵癌に対するEUS-FNAの診断能の2項目について検討した.
【結果】
原発部位および組織型は,腎細胞癌(淡明細胞癌)6例,肺癌(腺癌)4例,肉腫3例(骨肉腫2例,子宮肉腫1例),悪性リンパ腫2例(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫1例,マントル細胞リンパ腫1例),悪性黒色腫2例,卵巣癌1例,涙腺腺癌1例,大腸癌1例,乳癌1例.平均腫瘍径は35.3±18.3mm (13-90mm),個数は単発17例(81%)/多発4例(2-8個),転移部位は頭部 4例/体部11例/尾部4例/多部位2例,転移時期は同時性4例/異時性17例であった.転移性膵癌のEUS所見は,通常型膵癌と比較し1) 多発 2) 辺縁整 3) 内部混在エコーパターン (以上p=0.001) 4) hallo様辺縁低エコー像 (p=0.002) が有意に多く見られた.一方,1) 辺縁不整 (p=0.001),2) 貯留嚢胞 (p=0.01),3)尾側膵実質萎縮所見 (p=0.03)は転移性膵癌に比較し有意に通常型膵癌に多く見られる所見であった.また,部位,腫瘍径,尾側膵管拡張,内部石灰化像,内部嚢胞変性の所見はいずれも有意差を認めなかった.転移性膵癌の 14例 (67%)に対してEUS-FNABを施行した.このうち13例(92.8%)より悪性の診断がえられた.うち10例には免疫染色や遺伝子検査も付加することで正診率の向上に寄与した.1例は検体採取不良により診断不能であった.膵内分泌腫瘍との鑑別が問題となったが外科切除にて腎細胞癌膵転移と診断した.一方,13例 (62%) にERP下膵液細胞診を施行したが,悪性の診断がえられたのは2例 (15.3%) のみであった.重篤な合併症は1例も認めなかった.
【結論】
転移性膵癌のEUS像は圧排性増殖を示す所見( 辺縁整,hallo様辺縁低エコー像 ) と出血壊死を呈する所見(内部混在エコーパターン) が,通常型膵癌との最も重要な鑑別点であると考えられ,EUSはその所見を明瞭に捕らえることが可能であった.また転移性膵癌に対するEUS-FNABは膵液細胞診と比較し良好な正診率がえられ,安全性にもすぐれ極めて有用な診断法であると考えられた.