Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S316)

NOMI( non-occlusive mesenteric ischemia) の診断における造影超音波の有用性

Contrast enhanced ultrasonography in non-occlusive mesenteric ischemia

神崎 智子1, 畠 二郎2, 今村 祐志2, 筒井 英明1, 斎藤 あい3, 眞鍋 紀明1, 鎌田 智有1, 山下 直人4, 楠 裕明4, 春間 賢1

Tomoko KANZAKI1, Jiro HATA2, Hiroshi IMAMURA2, Hideaki TSUTSUI1, Ai SAITO3, Noriaki MANABE1, Tomoari KAMATA1, Naohito YAMASHITA4, Hiroaki KUSUNOKI4, Ken HARUMA1

1川崎医科大学付属病院食道・胃腸内科, 2川崎医科大学付属病院検査診断学, 3川崎医科大学付属病院消化器外科学, 4川崎医科大学付属病院総合診療科

1Department of Gastroenterology, Kawasaki Medical School Hospital, 2Department of General Medicine, Kawasaki Medical School Hospital, 3Department of Surgery, Kawasaki Medical School Hospital, 4Department of General Medicine, Kawasaki Medical School Hospital

キーワード :

【背景】
非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia以下NOMI) とは,主幹動静脈に器質的な閉塞がないにもかかわらず,広範な腸管の虚血・壊死をきたす予後不良な疾患であり,早期の診断が必要とされるものの必ずしも容易ではない.腹部血管造影検査はNOMIの確定診断のためのGolden standardの検査として認められているが,侵襲的である上に造影剤による合併症を伴うため,時に施行そのものすら困難である.一方,体外式超音波検査(以下US)は非侵襲的で,ベッドサイドで迅速に行うことが可能である.超音波造影剤SHU-508A(商品名:LevovistTM;Shering, Berlin, Germany)やPerflubutane(商品名:SonazoidTM;第一三共株式会社,東京)には重篤な副作用はなく,従来評価が困難であった消化管壁の微細循環を簡便かつ非侵襲的に評価することが可能である.そこで本症の診断における造影超音波の有用性を検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は2006年から2009年の間に造影US( LevovistTM: 2例,SonazoidTM: 3例) が施行され,その後に血管造影検査( n=3) もしくは開腹手術( n=2) によりNOMIと確定診断されたのべ5症例( 男性:女性=3:2,平均年齢74.4±13.8歳)である.前処置は行わず,約5-10分間通常のB-modeで腹部全体を観察し,腸管の拡張や蠕動低下,腸管壁肥厚の有無などを評価した.B-modeでの観察後,LevovistTM(1500 mg/5 mL)をワンショット静注下advanced dynamic flowTM間欠送信 (interval, 2 - 4 seconds),またはSonazoidTM(0.015ml/kgBW )静注下低音圧ハーモニックイメージング( mechanical index: 0.2 - 0.5 )により約2分間観察し,腸管壁の染影が他の正常腸管,もしくは胃壁と比較し同様か,または,低下・消失しているかを評価した.使用機種は,東芝AplioTMである.消化管に対するSonazoidTMの使用も含め,本研究は院内の倫理委員会の承認および患者からのinformed consentを得て行った.
【結果】
B-modeでは5例中3例に腹水を認めた.5例中1例は小腸蠕動の温存されている部分と低下・消失を呈する部分が混在し,4例では小腸全体の蠕動が低下・消失していた.造影US上,5例中4例において,小腸壁の染影の良好な部分と不良な部分との混在が観察された.特に染影が乏しい部位は,小腸壁が菲薄化している部分(n=1)・小腸の拡張部(n=1)・蠕動消失部( n=1)であった.5例中3例の症例で肥厚した小腸壁が認められ,そのうち2例において肥厚部の染影は良好で,残りの1例の肥厚部では染影は良好な部分と不良な部分とが混在していた.
【考察・結語】
NOMIにおける造影超音波像の特徴として,小腸壁の造影が良好な部分と,不良・消失の部分が混在して観察されことが挙げられた.本疾患の早期診断において,非侵襲的にベッドサイドで診断し得る造影USは有用な検査として期待される.