Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S315)

Real-time tissue elastography®を用いた膵組織均一性定量化の試み

Preliminary results of the quantitative analysis in diagnosing fibrous change of “bright pancreas” using real-time tissue elastography®

伊藤 裕也

Yuya ITOH

名古屋大学医学部附属病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Nagoya university graduate school of medicine

キーワード :

【背景】
Fatty pancreasとは膵臓に著明な脂肪化を来した病態であり,最近では脂肪化に線維化を伴ったSteato pancreatitisの概念も提唱されている.早期の慢性膵炎は膵実質に石灰化を認めない慢性膵炎の初期像と考えられており,Rosemont分類等のEUSによる診断が提唱されている.膵線維化と糖尿病や術後膵液瘻との関連も報告されており,膵線維化の診断は臨床的に重要な課題である.しかし体外式超音波のB‐mode画像では膵実質の詳細を把握する事は困難であり,膵線維化の診断には限界がある.組織弾性を視覚化可能なReal-time tissue elastography®:EG(日立メディコ)は膵組織均一性(膵線維化)を診断できる画像診断法としても期待される手法である.
【目的】
膵臓のEG画像を元に膵組織均一性を定量化できる指標を抽出すること.
【対象と方法】
対象は非慢性膵炎例30例で,平均年齢は59.4歳(29-81歳),男女比は18:12であった.肝臓よりエコー輝度の高い膵臓を高エコー群(Fatty pancreas群13例)と定義し,低〜等エコー群(Control群17例)との間で比較検討を行った.観測装置は日立メディコ社製EUB-8500,HV900を使用し,B‐mode観察およびEG観察を行った.EG画像のROIの大きさは膵体部を中心に2×4cmのものと,それより大きな3×4cmのものの2種類を設定した.同ROIにおいて良好にEG画像が得られた1症例あたり8画像を解析に使用した.検討項目を以下に示す.1)プロトタイプ解析ソフト(日立メディコ)を用いて画像の均一性に関する13項目を取得.13項目中,再現性が高く,ROIの大きさに影響されない均一性定量化指標を決定すること.2)膵実質エコー輝度と各種臨床所見(年齢,性別,BMI,飲酒量,脂肪肝,高脂血症,糖尿病,Alb値,均一性定量化指標)を比較検討すること.3) 糖尿病の有無と各種臨床所見(前述)を比較検討すること.
【結果と考察】
対象例のEG画像は27例/30例で描出され,描出不能例の解析深度は平均4.6cmであった.1)Contrast(歪み画像において近接する2点の差分値が大きい点が多く存在すると高値)とCorrelation(歪み画像において深度方向に同じ値となる点が多く存在すると高値)が選択された.〔歪み画像とはEG画像で表示される色調のピクセルを1(青)から256(赤)段階に数値化(歪値)し,それを白黒画像で表示した画像〕2)fatty pancreas群においてContrast は高く,Correlationは低い傾向(それぞれp値=0.070,0.101)を示した.3)糖尿病症例においてContrastは高く,Alb値,Correlationは低い傾向(それぞれp値=0.126,0.141,0.141)を示した.
【結論】
fatty pancreas症例および糖尿病症例においてContrast は高く,Correlationは低い傾向,つまりEG画像は不均一な傾向になった.同項目は膵EG画像の不均一性定量化の指標になりうると考えられた.