Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S315)

組織ドプラ法を応用した食道運動機能評価

Evaluation of esophageal function using Tissue Doppler Imaging

筒井 英明

Hideaki TSUTSUI

川崎医科大学食道・胃腸内科

Division of Gastroentrogy, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景と目的】
高齢化社会を背景として,誤嚥などの嚥下障害が増加している.一般的な嚥下機能評価法として嚥下造影検査(videofluorography:以下VF)が用いられているが,検査設備,被爆などの制約が存在する.一方循環器領域に用いられている組織ドプラ法(Tissue Doppler Imaging,以下TDI)はその有用性が高く評価されているが,他の領域での応用に関する報告は少なく,食道運動機能評価については皆無に等しい.そこでTDIを食道運動機能評価に応用し,その有用性を検討した.
【対象】
健常ボランティア18名(男12名,29.1±6.9歳)(方法)使用機種は東芝SSA-790A,プローブは8 MHzリニアである.被検者は仰臥位とし,輪状咽頭筋の尾側端から約1 cmの部位における頚部食道短軸像を描出し,測定部位とした.負荷食として約5 mlのゼリー(ウイダーinゼリーTM,森永製菓)を仰臥位において注射用シリンジで口腔内に注入の後,全量を一度に嚥下する際の食道運動をTDIにより観察した.評価は5回ずつ施行した.画像はraw dataとして機器のメモリに保存し,検査終了後に機器内臓の解析ソフトを用いて画像解析を行った.なお5名においては超音波検査との比較検討を目的として同日に造影剤を混入した寒天ゼリーを試験食としたVFを施行した.
【結果】
全例検査に伴う重大な事故は経験せず,TDIにより食道運動の定量的評価が可能であった.食道壁運動の指標となりうるパラメータとして,食道入口部通過時間(弛緩時間),弛緩時間+収縮時間,食道壁(短軸像)の速度(縦方向),食道壁(短軸像)の速度(横方向),食道壁の縦方向の最大移動距離などの測定が可能であり,今回の検討ではその値は食道入口部通過時間(弛緩時間)が555.4±81.93(s),弛緩時間+収縮時間が1244±133 (s),食道壁(短軸像)の速度(縦方向)が21.3±6.1(mm/s),食道壁(短軸像)の速度(横方向)が21.4±5.45(mm/s),食道壁の縦方向の最大移動距離が3.85±1.79 (mm)であった.食道入口部通過時間をTDI上食道の弛緩開始時間から最大弛緩時までと定義すると,その値は555.4±81.93(s)であり,VFにより測定された値である546.7±68.7(s)と近似しており相関が見られた(相関係数r=0.7649, p=0.027, Spearmanの順位相関係数検定)
【結語】
TDIを用いた食道運動機能評価は,食道運動に多角的パラメータを用いて定量的に評価することが可能であるという,従来法にない特徴を有している.各パラメータの意義や基準値については今後の継続検討を必要とするが,被爆もなくベッドサイドで簡便に施行できる検査法であることなどからも高い臨床的有用性が期待された.