Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S314)

造影超音波検査による肝細胞癌の診断能〜Gd-EOB-MRI,Dynamic CTとの比較検討〜

Differential diagnosis of hepatocellular carcinoma;Diagnostic ability of contrast-enhanced ultrasonography

井上 達夫1, 畑中 絹世1, 前川 清2, 工藤 正俊1

Tatsuo INOUE1, Kinuyo HATANAKA1, Kiyoshi MAEKAWA2, Masatoshi KUDO1

1近畿大学医学部附属病院消化器内科, 2近畿大学医学部附属病院腹部超音波室

1Gastroenterology and hepatology, Kinki university school of medicine, 2Abdominal ultrasoiund unit, Kinki university school of medicine

キーワード :

【目的】
今回我々は,造影エコーによる肝細胞癌の診断能,検出能をDynamic CT,Gd-EOB-MRI(EOB-MRI)と比較検討を行った.
【対象・方法】
2008年1月から2009年12月までにEOB-MRIを施行し,Dynamic CTもしくはソナゾイドを用いた造影超音波検査を施行した患者180症例392結節を対象とし,これらの所見をretrospectiveに検討した.対象患者の平均年齢は67歳で,男性が141例,女性39例.腫瘍径の平均は14.2mmであった.造影超音波検査はLogiq 7 (GE メディカルシステム)を用い,Coded phase inversion (CPI) mode; MI値,0.2; Focus point,1 point (depth 10cm)で腫瘍の観察を行った.造影剤はSonazoidを0.010 ml/kgを静脈内注入し,vascular phaseとpost-vascular phaseの染影を観察した.血流診断はCTA-CTAPをgold standardとし,造影超音波検査のvascular phaseにおける肝細胞癌の診断能をDynamic CT,Gd-EOB-MRIと比較検討を行った.更に乏血性結節もしくは組織学的検討を行った結節のpost-vascular phaseの所見とEOB-MRIの肝細胞相の所見の比較検討を行った.
【結果】
CTA-CTAPを施行した30例で肝細胞癌と診断できた症例は造影エコー80%(20/25,5例は未施行),EOB-MRI 87%(26/30),Dynamic CT 83%(25/30)であった.(N.S) 2種類以上の画像検査で乏血性であった結節は42例存在し,post-vascular phaseでは32例(89%)がisoを呈し,4例(11%)がdefectとなった(6例は未施行).EOB-MRIの肝細胞相では37例(88%)がlow intensity,4例(12%)がisoまたはhigh inteisntyを呈した.組織診断を行った23例の検討では,post-vascular phaseで14例( 低分化肝癌2例,中分化肝癌2例,高分化肝癌7例,混合型肝癌2例Dysplastic nodule :DN 1例)がdefectを呈し,9例 (中分化肝癌1例,高分化肝癌6例,DN 2例)がisoを呈した.一方EOB-MRIの肝細胞相でlow intensityを呈した結節は20例(低分化肝癌2例,中分化肝癌4例,高分化肝癌11例,混合型肝癌2例,DN 1例),iso intensityを呈した結節は1例 (高分化肝癌),high intensityを呈した結節は2例(高分化肝癌1例,DN 1例)であった.Post-vascular phaseでisoであった肝細胞癌はEOB-MRIの肝細胞相では全例low intensityを呈した.
【結論】
肝細胞癌の診断において,血流評価の観点からは造影超音波検査はDynamic CT,Gd-EOB-MRIと同等の診断能を有する.Post-vascular phaseでisoとなる結節でもEOB-MRIでは全例肝細胞相で描出され,肝細胞癌の局在診断においてEOB-MRIは優れた検出能を有する.EOB-MRIと造影超音波検査を併用する事により腫瘍の悪性度評価をより詳細に検討することが可能となり,治療時期の決定に有用である.