Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
循環器

(S311)

超音波ドプラ法による下肢閉塞性動脈硬化症における腎動脈狭窄合併率の検討

Incidence of renal artery stenosis in patients with peripheral arterial disease by ultrasonic Doppler method

八鍬 恒芳1, 原田 昌彦1, 丸山 憲一1, 吉川 浩一1, 煙草 敏1, 寳田 雄一1, 林 京子1, 橋本 優子1, 原 文彦2, 山崎 純一2

Tsuneyoshi YAKUWA1, Masahiko HARADA1, Kenichi MARUYAMA1, Kouichi YOSHIKAWA1, Satoshi TABAKO1, Yuichi TAKARADA1, Kyouko HAYASHI1, Yuko HASHIMOTO1, Fumihiko HARA2, Junichi YAMAZAKI2

1東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター大森病院循環器内科

1Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center Omori Hospital, 2Department of Cardiology, Toho University Medical Center Omori Hospital

キーワード :

【背景】
超音波ドプラ法の装置改良や普及に伴い腎動脈狭窄(RAS)の診断精度は向上している.しかしながら,糖尿病や虚血性心疾患などの動脈硬化性疾患を有する症例においても,特に腎動脈を精査しなければRASが見逃されている可能性は高いと推測される.この数年,我々は,より多くのRASを検出する目的で下肢動脈超音波検査時に腎動脈の評価も同時に行っている.本研究の目的は,下肢閉塞性動脈硬化症(PAD)におけるRAS合併率を超音波ドプラ法より検討することである.
【方法】
対象は,2007年12月から2009年12月までの2年間で下肢動脈超音波検査を行った連続312例(男/女;204/108例,平均年齢;67±12歳)で,血液透析患者は除外した.PADの診断は,超音波ドプラ上明らかな閉塞病変が存在するものと,狭窄部peak systolic velocity(PSV)が2m/s以上もしくは狭窄部PSVが中枢側PSVの2倍以上の流速で,狭窄後ドプラ波形が明らかに変化しているものとした.同時に行った腎動脈評価としては,左右腎動脈主幹部のPSV(R-PSV)および腹部大動脈のPSV(Ao-PSV)を測定し,両者の比(R-PSV/Ao-PSV)よりRA ratio(RAR)を算出した.RASの定義はStrandnessら1)の報告より,R-PSV≧180cm/sをRASとし,1)60%未満狭窄(R-PSV≧180cm/s,RAR<3.5)と,2)60%以上狭窄(R-PSV≧180cm/s,RAR≧3.5)に分類,両側RASの合併率についても検討した.また,PAD症例は膝関節を基準とし,狭窄・閉塞病変の存在部位から,膝上病変群(AK群),膝下病変群(BK群),膝上下病変群(AK+BK群)に分類しRAS合併率を検討した.
【結果】
下肢動脈および腎動脈ドプラ検査を施行した312例中で203例がPADと診断された.PAD症例におけるRAS合併は80例(39.4%)で,60%以上狭窄RASは44例(21.7%),60%未満狭窄RASは36例(17.7%)であった.また,PAD症例における両側RAS合併は28例(13.8%)であった.一方,PADを認めなかった109例におけるRAS合併は13例(11.9%)であった.PAD病変部位別内訳のRAS合併は,AK群;36/76例(47.4%),BK群;6/54例(11.1%),AK+BK群;38/73例(52.1%)であり,AK病変を有する群でRAS合併率が高かった.この内,60%以上狭窄RASはAK群;18/36例(50%),BK群;2/6例(33%),AK+BK群;24/38例(63.2%)と,AK+BK群で多かった.
【結論】
今回の検討において,PAD症例の約2割に60%以上狭窄RASの合併を認め,60%未満狭窄RASも含めるとその合併率は約4割に及んだ.特に膝関節より中枢側に病変が存在するPAD症例においては,約半数にRASを合併する可能性が示唆された.PAD症例においては積極的に腎動脈評価も行い,RASの検出に努めるべきであると考える.
【参考文献】
[1]DE Strandness, et al. Duplex scanning in diagnosis of renovascular hypertension. J Surg Clin North Am 1990;70(1):109-17