Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
基礎

(S309)

超音波計測融合シミュレーションによる分岐血管の流量推定

Estimation of Flow Dividing Ratio by Ultrasonic-Measurement-Integrated Simulation

船本 健一1, 加藤 宇海2, 早瀬 敏幸1, 小笠原 正文3, 地挽 隆夫3, 橋本 浩3, 見山 広二3

Kenichi FUNAMOTO1, Takaumi KATO2, Toshiyuki HAYASE1, Masafumi OGASAWARA3, Takao JIBIKI3, Hiroshi HASHIMOTO3, Koji MIYAMA3

1東北大学流体科学研究所, 2東北大学大学院医工学研究科, 3GEヘルスケアジャパン株式会社超音波研究室

1Institute of Fluid Science, Tohoku University, 2Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Ultrasound Lab., GE Healthcare Japan

キーワード :

【目的】
血管分岐部における血流の分流比により,動脈硬化の進展や狭窄の存在を評価することが可能である.しかし,分岐部においては流れの剥離が生じ,速度分布が非対称となるため,流量を正確に知ることは困難である.著者らは,血流の超音波計測と数値解析を融合した超音波計測融合シミュレーションを提案し,頚動脈内の血流を対象にフィージビリティスタディを行ってきた.本研究では,超音波計測融合シミュレーションにより,血管分岐部の分流比を推定する手法を提案する.
【方法】
超音波計測融合シミュレーションでは,血流の超音波カラードプラ計測結果を基に血管形状を抽出し,血流の数値解析を行う.その計算過程において,超音波計測と計算によるドプラ速度を比較し,その間の誤差を補正する仮想外力を数値解析にフィードバックすることにより,計算結果を実際の血流場に収束させる.計算に用いる境界条件については,カラードプラ画像の速度値の和から流入血流量を推定する.ここで,上流端の正確な速度分布は不明であるが,それに起因する誤差はフィードバックにより補償される.一方,下流端には流量と抵抗値の積で定義する圧力を与えるが,この抵抗値を超音波計測結果に基づいて調整し,分流比を推定する.具体的には,不動点反復法により,計測と計算による下流境界近傍領域のドプラ速度の平均値の差に応じて抵抗値を更新する.本研究では,数値実験による基礎的検討を行った.頚動脈の分岐を模擬した2次元流路を作成し(図参照),上流端に放物分布の速度条件を与え,下流端の抵抗値の比率をA:B = 3:1として定常流の数値解析を行った.得られた数値解を基準解と定義し,速度ベクトルを超音波ビーム方向に射影することにより,計測結果に相当するドプラ速度を得た.一方,超音波計測融合シミュレーションでは抵抗値をA:B = 1:1として計算を開始するが,繰り返し計算の過程において基準解のドプラ速度の情報を用いて流量推定を行い,分流比の変化を調べた.
【結果】
超音波計測融合シミュレーションによる流れ場の可視化結果と分流比の推定過程を図に示す.繰り返し計算過程において,ドプラ速度の計測結果に基づいて下流端の抵抗値を変化させることにより,目標の流量に収束していく様子が確認される.本手法により,各時刻において血流場や血行力学の情報を再現できると同時に,分岐血管の流量・分流比を正確に推定できる.