Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

奨励賞演題
基礎

(S307)

周波数領域干渉計法とCapon法を用いた超音波B-mode像の高空間分解能化

Improvement of Spatial Resolution for Ultrasonic B-mode Images Using Frequency Domain Interferometry and Capon Method

瀧 宏文1, 瀧 公介2, 阪本 卓也1, 山川 誠3, 椎名 毅4, 佐藤 亨1

Hirofumi TAKI1, Kousuke TAKI2, Takuya SAKAMOTO1, Makoto YAMAKAWA3, Tsuyoshi SHIINA4, Toru SATO1

1京都大学大学院情報学研究科 通信情報システム専攻, 2滋賀医科大学解剖学講座神経形態学, 3京都大学先端医工学研究ユニット, 4京都大学大学院医学研究科

1Graduate School of Informatics, Department of Communications and Computer Engineering, Kyoto University, 2Department of Anatomy, Shiga University of Medical Science, 3Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University, 4Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
糖尿病,高血圧,高脂血症など生活習慣病の予防・治療のため,血管の動脈硬化性変化を早期に発見し,早期に治療を行うことが重要である.そのため,頸動脈など大血管の層構造を高分解能で描出し,血管壁の肥厚や血管の狭窄を高精度で検出することが診断能向上のため必要である.我々はレーダ分野や眼底検査で実用化されている光干渉断層計などで用いられる周波数領域干渉計法(FDI)に方向拘束付出力電力最小化法であるCapon法を適用する高分解能イメージング法を提案してきた.
【実験方法と結果】
提案する高分解能イメージング法の臨床応用への実現可能性を調べるため,我々は商用の超音波診断装置(Hitachi EUB-8500)から出力されたIQ信号に提案法を適用した.使用したプローブはリニアアレイプローブであり,走査線間隔は約0.13 mm,送信波の中心周波数は7.5MHzである.ゼラチン20%のゲル内に厚さ1.5 mmの3%寒天層を配置し,ゼラチンと寒天の境界からの反射波をCapon法に用いる参照波とした.ゼラチン20%のゲル内に厚さ0.35 mmの3%寒天層を配置した組織ファントムを作成し,超音波診断装置から得られたIQデータに提案法を適用した結果,寒天層とゼラチンとの境界がB-mode像と比較し明瞭に描出された.また,提案法で描出された画像から寒天層の厚さを計算した結果,推定された厚さが0.34 mmとなった.さらに,豚大腿動脈を生理食塩水内に設置し,超音波診断装置でIQデータを取得し提案法を適用した.図1(a)が超音波診断装置で描出された大腿動脈のB-mode像,図1(b)が提案法により描出された大腿動脈の像である.B-mode像と比較し,提案法による描出像において血管壁の境界が明瞭に描出された.
【結論】
本研究により,提案する高分解能イメージング法は商用の超音波診断装置によって取得されたIQ信号に適用可能であることがわかった.また,提案法により層構造の厚さを高精度で測定でき,寒天層や豚大腿動脈など様々な材質の層構造をロバストに高分解能でイメージングすることができることが示唆された.以上のことから,提案法により頸動脈などの大血管を高分解能で描出し,血管壁の肥厚や血管の狭窄を高精度で検出し生活習慣病の診断能を向上できる可能性があると考えられる.