Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画4
結節性甲状腺腫診断基準をめぐって

(S303)

結節性甲状腺腫診断基準にあてはまらない悪性の甲状腺疾患

Diagnostic criteria for thyroid nodules on ultrasonography -Characteristic figures on ultrasonography of another types of thyroid malignancy -

小林 薫

Kaoru KOBAYASHI

隈病院外科

Surgery, KUMA HOSPITAL

キーワード :

【はじめに】
結節性甲状腺腫の診断治療は視診触診のあと,超音波検査と細胞診を行う.超音波検査において「結節性甲状腺腫診断基準」は臨床的に重要な基準を提示している.甲状腺の超音波検査を始めたばかりの初心者から熟練者までこの基準は有用である.この「結節性甲状腺腫診断基準」によれば,甲状腺悪性腫瘍の症例の大部分は診断が可能であろう.しかしながら,少数の甲状腺の悪性腫瘍はこの「結節性甲状腺腫診断基準」にあてはまらないであろう.この基準にあてはまらない悪性腫瘍について超音波所見と臨床所見を提示する.
【それぞれの超音波所見と臨床所見】
1.乳頭癌の特殊型A.嚢胞内突起型の乳頭癌:かなり大きな嚢胞を形成する.その嚢胞内に充実性部分が突出する.嚢胞内で充実性部分は気管側から外側の方向に向かって突出する.充実性部分には微細多発の高エコー輝点と血流シグナルが存在する.良性の嚢胞形成の腫瘍と混同するおそれがある.B.被包型乳頭癌:形状は整を示す.境界部に整形の低エコー帯を形成する.内部は均一で嚢胞部分が多い.頚部リンパ節腫大は少ない.この診断基準からは良性結節にみえる.C.びまん性硬化型乳頭癌:甲状腺内には結節を形成しない.甲状腺はびまん性に腫大する.甲状腺の被膜は少し凹凸を呈する.内部は少し高エコーレベルを示し,微細多発高エコーが存在する.病側の頚部リンパ節には必ず多発性数珠状にリンパ節が腫大を示す.触診では硬くびまん性に触れる.慢性甲状腺炎と混同するおそれがある.若年の女性に多く,肺転移を起こすことが多い.D.ハニカム型乳頭癌:小嚢胞がある部位に多発し,集簇する.癌の全体の境界がはっきり認められない.頚部リンパ節転移が多い.単なる良性の嚢胞と混同される.2.その他の腫瘍 A.悪性リンパ腫:結節型とびまん型がある.結節の形状は不整.境界は明瞭で,極めて粗雑である.内部のエコーレベルは極めて低で,無エコーを示すこともある.後方エコーは太い帯状の増強を示す.偽嚢胞様所見という.副所見として腫瘤の境界が内部に大きく切れ込んでいることがあり,「切れ込み像」という.内部においてまだら状,あるいは斑点状にエコーレベルが低と中に混在してみえることがあり,「虫食い像」を呈する.高年齢,女性に多く,慢性甲状腺炎の合併が多い.B.胸腺様分化を示す癌:甲状腺の下極に存在する.形状は明らかな分葉状(八つ頭様),あるいは甲状腺正常部分と周辺に対して凸を示す.単発性で充実性.内部エコーは不均一である.高エコーと嚢胞は示さない.C.肉腫:形状は外側に対して凸状,分葉状を示す.充実性.境界は明瞭で粗雑.内部は不均質,低エコーである.D.硝子化索状腫瘍:形状は整.境界は明瞭であるが,細かい粗雑を示す.内部は均一,充実性,血流シグナルが非常に多い.
【最後に】
超音波検査において「結節性甲状腺腫診断基準」は臨床的に重要な基準を提示している.しかしながら,少数の悪性腫瘍はこの診断基準にあてはまらない超音波所見を呈する.誤診しないためには細胞診が必要である.