Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画3
胎児異常超音波スクリーニングのガイドラインを考える

(S300)

超音波検査士によるスクリーニングを行う立場から

Ultrasound screening for fetal abnormalities by sonographer

竹村 秀雄

Hideo TAKEMURA

医療法人竹村医学研究会小阪産病院

Kosaka Womens Hospital

キーワード :

 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会で編集・監修された産婦人科診療ガイドライン産科編2008ではCQ001の「特にリスクのない単胎妊婦の定期健診は?」の解説に6回の超音波検査の内容を示し,その内4回には「推奨レベルB」の項目が含まれている.妊娠20週前後には羊水過多・過少について,更に30週前後には発育遅延等の胎児異常検出のためのエコー検査を勧めるとしながら施設によっては胎児形態異常スクリーニングが行われる場合もあるが現時点では標準的検査とは考えられていないとしている.胎児異常に関する超音波スクリーニングについて考えると1.インフォームドコンセント 2.実施担当者 3.実施回数とその妊娠週数 4.チェック項目とチェックリスト 5.正常・異常範囲の設定 6.異常発見時の伝え方 7.異常症例の院内対応と地域医療連携体制 8.精度管理 9.登録と予後追跡,等々多くの課題があろう.ここでは日本超音波医学会認定の超音波検査士による胎児超音波スクリーニングを行って来た当院の実状を報告する.当院では年間約2000件の主としてローリスク分娩を取扱いハイリスク症例は大阪の周産期医療システム(OGCS,NMCS)に依頼している.妊婦健診は医師外来,助産師外来とも毎回超音波を用いて行われている.超音波スクリーニングは妊娠10週頃からほぼ8週間毎に4回,30分間の予約制で超音波検査士5名(検査技師3名放射線技師2名)が3台の超音波検査装置を用いて行う.検査にあたってはインフォームドコンセントを得た上で家族の立会いも認めて行い画像に説明を加えてDVDに録画し提供している.画像,計測データ,コメントをサーバーに保存すると共に検査結果を医師に報告し医師は必要に応じて再検査した上で結果を妊婦に伝えている.胎児超音波スクリーニングを4回実施するようになってから5年間の10275例における胎児形態異常(罹患率3.4%)の検出率は表の通り56.4%であった.また異常を検出した時期の割合は初期19.3%中期Ⅰ20.3%中期Ⅱ27.9%後期32.5%であった.日本産婦人科医会の2007年の全国調査では全症例77072例のうち奇形児は1485例(罹患率1.87%)で,妊娠中に発見された奇形は842例と検出率は56.7%であった.超音波検査士による当院のスクリーニング体制は一定のレベルを保ち得ているものと考える.