Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画3
胎児異常超音波スクリーニングのガイドラインを考える

(S300)

日常診療からみた胎児超音波スクリーニング

Fetal ultrasonpgraphy screening method proposeded by practical clinicals

尾本 暁子, 長田 久夫, 生水 真紀夫

Akiko OMOTO, Hisao OSADA, Makio SHOZU

千葉大学医学部附属病院周産期母性科・婦人科

Obstetrics and Gynecology, Chiba University

キーワード :

産科診療では現在超音波は必須の検査となっており,ほとんどの施設で健診の度に繰り返し超音波検査が施行されている.われわれ医療者としては,少しでも見逃しがないように,またより正確でアップデートな情報が得られるようにと考えて検査を実施してわけであるが,患者や家族はどのように考えているのであろうか.「毎回の検査で何も指摘されないのだから,胎児には全く異常がない」と考えてしまうのではないか.出生後に初めて児に異常が見つかり,「もっと早く分かっていたら何かできたのではないか」と産科医をとがめる患者やその家族の言葉を聞く,ほとんどの新生児科医や小児科・小児外科医がそのような経験をしたことがあるのではないだろうか.日本産科婦人科学会のガイドラインには,超音波スクリーニングが健診における標準検査ではないことがはっきりと述べられている.「胎児発育状態ならびに胎盤位置・羊水量異常検出のためのエコー検査は勧められているが,形態異常に関しては「施設によっては〜行われる場合もある.ただし,形態異常検出には実施者に対する特別な訓練が必要であり,また長時間のエコー検査が必要なので現時点では標準的検査とは考えられていない」と記載されている.それでも,産科医としては形態異常も含めてスクリーニングをしたいと考えているのではないか.TGAのように出生前診断が直接新生児予後に関わる場合でなくても,出生前診断を行うことで心理的な面でも家族の受け入れ準備ができることや,出生後の搬送先手配が素早くできるなどのメリットがある.ここ数年で,健診での超音波検査(スクリーニング)で胎児の異常が疑われ当科へ紹介されてくる症例が飛躍的に増加した.紹介元での超音波診断も,年々的確なものになってきている.また,当地で実施される超音波や胎児診断関連の研修会・セミナーの参加者は他のどのセミナーよりも多く,関心の高さがうかがわれる.このような,患者や家族の期待や産科医の矜恃などを考慮すると,純粋に医学的に出生前診断の価値が認められている一部の疾患以外についても,出生前診断の指針を出すことが必要な時期に来ているのではないだろうか.現状での「標準」を示しておくことは,医療者にとって過度の負担や期待から解放されることでもある.そこで,産科の忙しい日常診療の中で数%の特に出生後早期に児への対応を必要とする超音波でスクリーニングできる異常を選別するには何が必要かを,超音波所見や体制も含めて,最近の当科の症例も含めて考えたい.