Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画3
胎児異常超音波スクリーニングのガイドラインを考える

(S299)

全胎児を対象にした簡易胎児スクリーニング法

Simple and Easy Screening of All Fetuses

馬場 一憲

Kazunori BABA

埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター

Center for Maternal, Fetal and Neonatal Medicine, Saitama Medical Center, Saitama Medical University

キーワード :

 我国では,毎年100万人以上の児が出生しているが,そのすべてに形態異常のリスクが存在する.スクリーニングは,頻回かつ詳細に行えば行うほど異常の発見率は向上すると考えられるが,発見率の高いスクリーニング法であっても一部の胎児しか受けることができないような複雑な方法であっては意味がない.そのため,スクリーニング法を考えるにあたっては,次の4つの点を考慮することが必要である.
 1.超音波専門医でなくても容易に行うことができる.2.検査時間は短く,妊娠期間中の実施回数も少なくてすむ.3.そのため,周産期管理上,あまり重要でない項目は省く.4.ただし,周産期管理上,重要な形態異常の見逃しはできるだけ少なくする.
 超音波検査は,助かる児を助ける(生命だけでなく後遺症発症を防ぐ)ということが第1目的である.しかし,今の医学では救命することができない異常も存在するため,両親に妊娠の中断という選択肢を提供することも重要な目的の1つである.これらのことを考慮して,下記のような簡易スクリーニング法を考案した.
【妊娠10〜11週】
 胎児が小さく,詳細に各部を確認することは困難であるが,無頭蓋症などの致死的で大きな異常は,子宮内容除去術で人工妊娠中絶が可能な妊娠12週よりも前に発見することが望ましい.そのため,最低限,次の3項目についてチェックする.
 (1)胎児頭部が半球状で不整はないか.(2)胎児全体が羊膜腔の中にあるか.(3)四肢は4本確認できるか.
【妊娠18〜20週】
 この時期になると心臓を含め胎児の内蔵が良く観察できるようになり,また胎児に比して羊水量が多く外表の形態もよく観察できる.このため,胎児スクリーニングとしては最重要な時期である.チェック項目は16と増えるが,胎児の向きなど条件が良ければ,すべてをチェックしても3〜5分程度で行うことができる.
 このチェック項目だけでは,大動脈縮窄症や総肺静脈結合異常症などは検出できないが,最初の段階としてはスクリーニングを簡略化して,すべての胎児が受けられるようになってから徐々にチェック項目を増やしたほうがよいと考える.
 1.頭部:(1)BPDは妊娠週数相当か.(2)頭蓋内は左右対称で異常像を認めないか.(3)頭蓋外に突出する異常像を認めないか.2.顔:(4)口唇裂を認めないか.3.胸部:(5)心臓の位置と軸は左に寄っているか.(6)左右心房心室の大きさのバランスは良いか.(7)胸腔内に異常な像を認めないか.4.大動脈と肺動脈:(8)大動脈と肺動脈がラセン状に走行しているか.(9)大動脈と肺動脈の太さは,ほぼ同じか.5.腹部:(10)胃胞は,左側にあるか.(11)胃,胆嚢,膀胱以外に嚢胞を認めないか.(12)腹壁(臍部)から臓器の脱出を認めないか.6.脊柱・臀部:(13)椎体と棘突起が欠損無く並んでいるか.(14)背中,臀部に異常な隆起を認めないか.7.四肢:(15)十分な長さの四肢を確認できるか.8.羊水:(16)羊水過少も過多も認めないか.
【妊娠22週以降】 
 妊娠20週以降に,側脳室拡大,胸水,腹水,卵巣嚢腫などの異常が現れることがあるため,20週以降も,頭部,胸部,腹部に異常な液体貯留がないかを一瞬でもよいので確認することが望ましい.