Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画2
肝腫瘍の超音波診断基準の検証

(S296)

後血管相(クッパー相)の動物実験による検証

Verification of post vascular phase (Kupffer phase) by animal experiments

渡邉 リラ, 宗正 敏子, 松村 学

Rira WATANABE, Toshiko MUNEMASA, Manabu MATSUMURA

第一三共株式会社研究開発本部トランスレーショナルメディシン部

R&D Division Translational Medicine & Clinical Pharmacology Department, Daiichi Sankyo Co., Ltd.

キーワード :

【目的】
ソナゾイドの肝実質特異的な造影効果(クッパーイメージング)は,クッパー細胞に取り込まれたマイクロバブルに起因することが示唆されてきた.今回,新たなアプローチとして,肝実質の信号強度の増加(造影効果)から肝臓内あるいは単位クッパー細胞あたりのマイクロバブル数を算出し,既報から算出した数値と比較することで,上記機作をさらに支持することを試みた.
【方法】
肝臓中のマイクロバブル数はin vitroで求めたソナゾイド濃度と信号強度の検量線を基に,臨床用量(0.015 μL/kg b.w.)あるいはその半量を投与したラットの投与20分後の肝実質の信号強度(投与前後の差)から得た.
【結果】
In vitro水槽実験の結果,超音波画像の信号強度はソナゾイド濃度の増加とともに増加し,濃度-信号強度は,ほぼ原点を通る良好な直線性を示した(R=0.999).本検量線を基にラット肝実質の信号強度増加分から肝臓中のソナゾイド濃度を算出すると,臨床用量では,67.5±5.3 μL/L liver(n=3),半量では36.9±1.5 μL/L liver(n=3)で,この投与量の範囲でほぼ線形性がみられた.ソナゾイド投与液中のマイクロバブル濃度(1×109個/mL),体重250 gのラット肝臓9 g中のクッパー細胞数(2×108個)1)を用い,臨床用量での単位クッパー細胞あたりのマイクロバブル数を算出すると,0.3マイクロバブル/100クッパー細胞となった.
【考察】
我々は別報でのラット臨床用量投与において,共焦点顕微鏡観察によるクッパー細胞取り込みの割合は1マイクロバブル/100クッパー細胞であったことを報告している2).また,投与20分後のラット肝臓perflubutane分布量は約30%であり3),前述の文献値を用いて算出すると,臨床用量では0.6マイクロバブル/100クッパー細胞となった.
以上,今回のラット肝臓造影効果から求めたクッパー細胞への分布量は,多少の乖離はあるが既報からの2つの数値を超えるものではなかった(それぞれの1/3,1/2).このことから,肝実質特異的な造影効果はクッパー細胞に取り込まれたマイクロバブルに起因し,クッパー細胞以外にマイクロバブルが分布して造影効果を生じている可能性は低いと考えられた.
【参考文献】
[1]Wake K, Decker K, Kirn A, et al. Cell biology and kinetics of Kupffer cells in the liver. Int Rev Cytol. 1989;118:173-229.
[2]Watanabe R, Matsumura M, Munemasa T, Fujimaki M, Suematsu M. Mechanism of heptic parenchyma-specific contrast of microbubble-based contrast agent for ultrasonography. Invest Radiol. 2007;42:643-651.
[3]Toft KG, Hustvedt SO, Hals PA, et akl. Disposition of perfluorobutane in rats after intravenous injection of Sonazoid. Ultrasound in Med & Biol. 2006;32:107-114.