Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画2
肝腫瘍の超音波診断基準の検証

(S294)

肝腫瘤の存在診断,存在部位診断

Detection and regional diagnosis of hepatic nodules by ultrasonography

西田 睦

Mutsumi NISHIDA

大垣市民病院消化器科

Department of gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝腫瘤の超音波診断基準は1988年に公示され,広く活用されてきたが,最近の超音波診断装置の進歩,疾患概念の変化,経静脈性造影剤の臨床導入などにより,本診断基準の適応が難しい部分が指摘されていた.それらの問題点解消を目的に今回の診断基準の改訂が行なわれた.肝占拠性病変の診断は腫瘤が真に存在するのかしないのか,の存在診断から始まる.存在する場合には存在部位の同定,続いて質的診断を行い,その後の腫瘤性病変に対するストラテジーが決定されることとなる.今回は改訂された内容を中心に存在診断,存在部位診断に関して報告する.
【存在診断】
肝臓は三次元の立体構造であるが,現在の汎用装置では二次元の超音波画像に表示しているため,少なくとも異なった2断面での評価が必要となる.異なった2断面とは直交する2断面が望ましい.一つには偽病変を除外することである.1断面ではあたかも腫瘤のように描出されるが,断面を変えると連続性がある既存の構造物であったり,肝外の病変や構造であったりすることがある.しかしながら多くが肋骨に囲まれ,頭側には肺が存在する肝臓には少なからず死角が存在し,ビームの投入が困難な場合がある.そのような場合には1断面での評価が強いられ,また必ずしも直交する2断面での評価とはならない.以前の基準では(1)確信,(2)疑診,(3)要精査,(4)判定保留と4段階であったが,今回の改訂では(1)確信,(2)疑診,(3)判定保留と3段階となった.また判定の要素に従来のエコーレベルに輪郭を加え,腫瘤の輪郭が明瞭か不明瞭も存在診断の根拠とした.疑診,判定保留の場合には,実際の臨床では超音波による経過観察の他にCT,MRIなどの他画像診断に進む場合が多いため,その旨を注釈に記載した.
【存在部位診断】
腫瘤の存在が疑われた場合,次に存在部位診断が必要となる.他画像診断との比較,検証の際,または外科的切除やラジオ波焼灼治療など治療方針決定の際には部位の同定は必須である.部位診断は基本的にCouinaudの8区域分類で行なう.大きな腫瘍の場合にはHealeyの区域を用いる.しかしながら臨床では腫瘍が2区域の境界に存在する場合にしばしば遭遇する.その点を考慮し,今回の改訂では腫瘍の多くの部分を占める部分を先に記載し,その次に残りの部位を記載することとした.S3〜S4にかけて腫瘤が存在し,S4が主体の場合にはS4,3と記載することとし,肝癌取り扱い規約に準じた記載を推奨した.
【まとめ】
今後も超音波の三次元画像化,CT, MRIとのフュージョン画像の活用などが進み存在診断の概念も変化していくと思われるが,その汎用化まで数年以上費やされることが予想される.今回,肝腫瘤の超音波診断基準改定小委員会では大垣市民病院の熊田卓委員長のもとより実際の臨床に即した内容となるように改訂作業を行なった.是非この診断基準を参照,有効活用していただきたいと願う次第である.