Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画1
血管エコー検査の標準化をめぐる現況と将来展望

(S291)

深部静脈血栓症に対するエコー検査の標準化をめぐる問題点と展望

The assessment issue and advancement of vascular echo for deep venous thrombus

西上 和宏

Kazuhiro NISHIGAMI

済生会熊本病院循環器内科

Cardiology, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

日本超音波医学会より「下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法」が示されている.標準化のためのエビデンス構築には,確定診断のGold standardと多施設での2重盲検比較試験が必要となる.従来,深部静脈血栓症のGold standardは,静脈造影とされてきたが,侵襲的であり,ヒラメ静脈などの下腿静脈の評価や壁在血栓の診断感度に関しては,懐疑的である.したがって,深部静脈血栓症のGold standardが,現実的にはない状態であり,検査法の有用性を検証する事は極めて困難である.現在,CTやMRIなどの機器の進歩が著しく,これらの機器とエコー検査とで,有用性を比較検討する事が,今後のエビデンスを構築する一方法と思われる.エコー検査による静脈血栓の診断には,直接法として断層図と圧迫法があり,間接法としてカラードプラによる血流シグナルの欠損の有無とパルスドプラ法による大腿静脈血流波形をバルサルバ負荷およびミルキングを用いて評価する方法がある.断層図は画質の向上により,明瞭に描出される例が増加しているが,探触子から離れた静脈の血栓や描出が不良の例には限界がある.圧迫法は,血栓を遊離させる危険性を有しているため,症例により施行困難なことがある.カラードプラを用いた方法は,腸骨静脈から下大静脈の観察では,最も重要な評価であり,大腿静脈以下の末梢も比較的明瞭に血流シグナルが検出される.ただ,ヒラメ静脈では血流シグナルが見られない場合があり,またミルキングなどの血流誘発を要する場合もある.さらに,壁在血栓の判断は容易でないことが多い.パルスドプラを用いて大腿静脈の血流波形を評価する方法は,従来,大きな役割を果たしてきた.しかしながら,左右差で判断する必要があり,負荷を一定にする必要がある.また不完全閉塞例や側副路の発達した例では感度が低くなる.さらに,ミルキングは下腿の血栓を遊離させる危険性がある.以上を考慮すると,機器の進歩で,画質が向上すれば,断層図とカラードプラのみで,深部静脈血栓症を診断できることが,血栓塞栓症の危険性を回避する上で望ましいと考えられる.深部静脈血栓症は,その発症率の増加に伴い,エコー検査の重要性は年々増加している.非侵襲的で,感度と特異度の高い評価法となる事が望まれる.