Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

特別企画
特別企画1
血管エコー検査の標準化をめぐる現況と将来展望

(S290)

血管エコー検査の標準化に求めること:血管診療におけるエコー検査の位置づけと役割

The present situation and the future prospects for the standardization of the vascular ultrasonography. The recognition of the role of the ultrasonography in a vascular examination and the treatment

水上 尚子

Naoko MIZUKAMI

鹿児島大学医学部歯学部附属病院臨床技術部 検査部門

Division of Clinical Laboratory, Kagoshima University Hospital

キーワード :

近年生活スタイルの欧米化に伴い,いわゆる生活習慣病と呼ばれる糖尿病や高脂血症などが発症の起因となる血管疾患が急増している.また成人の3大死因でもある,脳血管疾患,心臓病も血管の異常が原因であり,生活習慣病=血管病であるとも言われている.このような背景から血管エコー検査のニーズは多岐にわたり,既に血管診療において必須の検査法となっている.しかしこのように急激に血管エコー検査の普及が進む中,検査法の標準化に関してはいくつかのガイドラインが提示されてはいるが,まだまだ不十分な点もあり,各学会でevidenceに基づく改訂が継続して検討されている.ここでは,血管エコーに携わるものとして,日常の臨床で標準化の必要性を感じている点について提示させていただき,血管エコー検査の標準化について会場の皆様とともに考えてみたい.
【検査の適応基準と検査方法の標準化】
血管エコー検査では,その依頼目的によりスクリーニング的な検査内容と詳細な評価まで求められる検査内容に大別される.これら検査の目的が曖昧な場合は,検査者としても非常にストレスに感じる場合がある.血管エコーはどこでも簡便に施行できる反面,局所を検査者の探触子走査で検索していくため,それなりの検査時間がかかる検査方法である.検査を依頼する側,検査を施行する側が検査の適応と評価内容について同一の認識をもつためにも標準化では,疾患別検査目的別に血管エコーの位置づけやその役割について,具体的に検査の適応基準として示す必要があるのではないかと考える.例えば,現在のガイドラインでも提示されているように下肢動脈の閉塞性動脈硬化症の評価では,検査の第一選択肢としてはABI検査などより簡便でスクリーニングとして適当な検査が先であり,血管エコー検査は治療対象となる狭窄病変の評価を主目的とした二次的な精査目的となる点や,深部静脈血栓症における下肢静脈エコー検査の位置づけなどがよい例である.
【機能評価としての血管エコー検査】
血管エコー検査では血栓や狭窄性,閉塞性病変の有無を問う検査の評価手順については,ある一定の評価方法が示され,標準化とまではいかなくても検査を施行する側にとってあまり迷いはない.しかし,治療の適応に関する評価方法となると安静の血管エコー法だけでは不十分な点もあり,ABI検査などでは運動負荷などと組み合わせた評価も行われている.血管エコーでもこうした負荷前後での情報など,機能評価にも対応した評価手順が標準化されることにより,より治療の適応に関して有意義な情報提供が可能ではないかと期待される.また,動脈硬化性病変では予防医学の観点から早期に病的変化を診断しうる機能的血管エコー検査法であるFMDや,血管の硬さをみるstiffness parameter βなども評価方法を標準化し,基準値について複数の施設で共同して検討することが必要である思われる.
【血管エコー検査法の標準化:2つの視点】
血管エコーの標準化では,装置の調整や検査手順,評価方法など超音波法の内容に関する視点と血管診療における血管エコーの位置づけ,役割など,診断から治療までの血管診療全般的な知識に基づく,臨床的な視点の2つがあると思われる.今回は後者に関することを主体に意見を述べたが,私たち技師はどちらかというと後者の視点に関する知識が薄い.血管エコー検査の標準化が整備されることにより,血管エコーも含めた血管診療に全般の視点の重要さ,血管エコーの結果がどのように診療にいかされるかを学び知ることにより,より臨床に役立つ有意義な検査が施行できるようになると考える.