谷口 学¹, 赤木 禎治¹, 草野 研吾², 伊藤 浩², 佐野 俊二¹

Manabu TANIGUCHI¹, Teiji AKAGI¹, Kengo KUSANO², Hiroshi ITO², Shunji SANO¹

¹岡山大学病院循環器疾患治療部, ²岡山大学医歯薬学総合研究科循環器内科

¹Cardiac Care Unit, Okayama University Hospital, ²Cardiovascular Medicine, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

キーワード :

【背景】
先天性心疾患，弁膜疾患といった構造的心疾患に対する経カテーテル的治療法が行われるようになり，複雑な治療手技をガイドするイメージングが重要となっている．国内では経カテーテル的心房中隔欠損（ASD）閉鎖術が保険認可され，X線透視とともに2D経食道心エコー図（2D-TEE）ガイド下に治療が行われている．しかし，2D-TEEガイド下閉鎖では，全身麻酔を必要とし，また，画像の点からも，ASDの全体像をとらえることができず，また，経食道プローブの近くに位置する下縁が欠損している症例では描出が困難であるといった問題点もある．近年リアルタイム三次元経食道心エコー図（RT-3DTEE）が利用可能となり，さらに経静脈的に右心房より観察する心腔内超音波（ICE）も欧米を中心に使われるようになった．
【目的】
経カテーテル的ASD閉鎖術の治療ガイドとしてのRT-3DTEE，ICEの有用性について，2D-TEEと比較検討すること．
【方法と結果】
対象は，2006年1月より2009年12月までに当科にて経カテーテル的ASD閉鎖術が行われた254症例（42.8±21.7歳）．経カテーテル的ASD閉鎖術の治療ガイドには全例2D-TEEを用いて行い，161症例はRT-3DTEEを併用し，さらに10症例はUltra-ICEによる観察も行った．RT-3DTEEにより，欠損孔の形態を容易に術者に伝えることができ，最大径の計測，周囲縁の評価も行うことが可能であった．また，Ultra-ICEによる観察では，下縁の描出に優れ，特に最大径20mm以下のASD症例ではデバイス留置のガイドと留置後の確認を容易に行うことができた．
【結論】
経カテーテル的ASD閉鎖術の治療ガイドにおいて，RT-3DTEEは治療に有用な情報を付加的に提供でき，治療を円滑に進めることに大きく貢献していると思われた．また，Ultra-ICEは下縁の描出に優れ，特に小さいサイズのASD症例においては，局所麻酔下で治療を行うことができる可能性が考えられた．