Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ6
びまん性肝疾患のUltrasound Functional Imaging

(S279)

移植後急性期肝に対するTransient Elastography適用の妥当性と有用性

Validity and feasibility of transient elastography for the transplanted liver in the peritransplantation period

井上 陽介, 菅原 寧彦, 金子 順一, 田村 純人, 國土 典宏

Yosuke INOUE, Yasuhiko SUGAWARA, Junichi KANEKO, Sumihito TAMURA, Norihiro KOKUDO

東京大学医学部附属病院肝胆膵・人工臓器移植外科

Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery and Transplantation Division, Department of Surgery, Tokyo University Hospital

キーワード :

【背景・目的】
Transient elastography(TE)は,非侵襲的かつ簡便な体外式肝硬度測定機器であり,近年では急性肝障害に適用した報告もみられる.移植肝においては,肝移植後慢性期のC型肝炎再燃の診断に用いられた報告が見られる.我々は,移植後急性期におけるグラフト肝の肝硬度変化を経時的に測定し,グラフトの状態変化との関連を検討したのでここに報告する.
【方法】
2006年7月から2008年3月までに教室で施行した肝移植のうち,右側肝グラフトの生体肝移植レシピエント24症例(術後に肝硬度測定),それらの生体ドナー24症例(術前に測定),左側肝生体ドナー5例(術後に残右肝を測定),脳死肝移植レシピエント3例(術後に測定)を対象とした.肝硬度値の定義は,測定1回につき機械の動作を10回以上行い,機械がvalidと判定した計側値10回の中央値を肝硬度値とした.移植前肝硬度,移植術後肝硬度を定期的に測定し,術後の経時的硬度変化については生体肝移植例を対象とし,術後合併症(拒絶,敗血症,後出血,肝動脈血栓症,門脈血流低下,血栓性微小血管障害)の有無で2群(16例 vs. 8例)に分け,術後の肝硬度値の変遷を週平均値で比較した.
【結果】
計678回の計測が行われ,その成功率は0.929 ± 0.119であった.成功率は,胸壁の厚さとの間に有意な負の相関を認めた(P<0.0021).また,肝硬度測定値の四分位範囲対中央値比は,移植後1カ月時でも21.1±11.2%と,移植前値 (15.6±8.5%)と比して高値であった.生体肝移植後のグラフトは,移植後第1週に硬度が急上昇し,以降徐々に軟化する傾向にあった.合併症あり群(n=8,図:実線)と,合併症なし群(n=16,図:破線)とで比較すると,合併症あり群の方が,術後第4週(p=0.0066),および第5週以降(p=0.0028)で有意に肝硬度値が高かった.急性拒絶を合併した3症例は全て,血清ビリルビン値の上昇,肝硬度値の急上昇と,門脈血流速度の急降下を同時に伴っていた.
【結論】
TEを移植後急性期の肝に適用すると,順調症例では,肝硬度値は一旦上昇した後徐々に低下し,合併症が起こると肝硬度値が高値遷延する結果が得られた.肝硬度値の上昇と門脈血流速度の低下が同時に起こった場合,急性拒絶を示唆している可能性がある.