Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ5
用語の誤用

(S274)

分かりやすい科学的表現

Scientific expression for readers’ easy understanding

藤本 武利

Taketoshi FUJIMOTO

平塚胃腸病院外科

Surgery, Hiratsuka Gastroenterological Hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査の対象は,3次元の立体構造物であり,たとえそれがBモード画像であろうとも2次元の平面図形として理解することはない.したがって,類円形腫瘤という表現自体に矛盾があり,これは,類球形あるいは球状腫瘤というべきである.かつて,電子スキャン以前と比較して“実時間表示”と表現されたこともあったが,しばらく前からこれは当然のこととして省略されている.類円形との表現は,たぶん,電子スキャン以前の名残であろう.頭の中では類球形と理解しているのだが,従来の習慣として,類円形と表現しても構わない,あるいはそう表現するのが通例であると教育されてきた結果なのであろう.しかし,検査所見を正しく記載するには,立体構造物の性状をありのまま述べるのが望ましい.
【医用超音波用語「辺縁」の誤用】
「超音波医学」2009年36巻1〜6号を通覧して,掲載論文が医用超音波用語集(最新第4版:平成17年発行)に記載された「辺縁」の定義を遵守しているかどうか調べてみると,一時期に比して改善がみられる.しかし,辺縁・境界・輪郭・周辺が相互に誤りやすい傾向は,今も続いている.特に「辺縁」を「輪郭」のように使用する誤りが目立つ.前掲用語集では,「辺縁:腫瘤や臓器の境界の内側部分」と定義されている.すなわち,辺縁はある領域を示すので,この属性として「腫瘤の辺縁が不整,あるいは平滑」という表現は適切でない.実際,「内側部分が不整」という表現には違和感があり,「腫瘤の輪郭が不整」のほうがしっくりする.ちなみに,他学会の対応を調べてみると,医学放射線学会「放射線診療用語集:改訂2版」でも「辺縁=periphery,臓器または腫瘤内部のうち境界に近い部分」と定義されており,本学会と同じであった.
【おわりに】
今や科学技術はグローバル化し,医学研究の成果を伝える相手は日本人ばかりではない.もとより,国内においても同邦人だから分かってくれるだろうとの「以心伝心」の甘えは許すべきでなく,本質を究めるためには,正確な表現で伝えることが重要である.なぜなら,誤解は進歩の妨げとなるからであり,科学的事実をありのままの科学的表現で伝えることの重要性を知らねばならない.