Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ5
用語の誤用

(S273)

肝腫瘍に関する用語の誤用について

Terminological misuse to a hepatic tumor

小川 眞広1, 小野 良樹1, 石綿 宏敏1, 山本 義信1, 後藤 伊織1, 古田 武慈1, 藤根 里抄1, 森山 光彦1, 石田 秀明2, 小笠原 正文3

Masahiro OGAWA1, Yoshiki ONO1, Hirotoshi ISHIWATA1, Yoshinobu YAMAMOTO1, Iori GOTO1, Takeshige FURUTA1, Risa TOUNE1, Mitsuhiko MORIYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Masafumi OGASAWARA3

1駿河台日本大学病院消化器肝臓内科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3GEヘルスケア超音波事業部臨床新技術開発Gr.

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Surugadai Nihon University Hospital, 2Center of Diagnosis Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Advanced Technology Reserch & Application Gr., GE Healthcare

キーワード :

【はじめに】
学術発表や論文に用いる際共通の認識が得られるためには用語を適切に使用することが必要となる.現在超音波の用語としては,日本超音波医学会が編集を行なっている「医用超音波用語集」が第4版まで改訂され発行されておりこれを元に当学会では討論されている.用語の誤用としては,直接その単語の意味自体が間違って使用されているほかに正確な意味が不明のまま使用となっているものや,単語の意味はあっているが使用方法が間違っているものもある.その代表的なものに減衰(attenuation)(超音波が吸収,散乱,反射などによって弱まること)が挙げられる.脂肪肝の超音波診断に深部減衰と標記されることが多いが超音波は減衰するもので深部のみが減衰するわけではなく間違った使用例で正式には減衰が強くなるという表現が正しいとおもわれる.今回我々は肝腫瘍にまつわる用語について誤用と思われる点について検討を行なったので報告する.spoke-wheel appearance:限局性結節性過形成の診断に用いる血管構築の表現であるが,日本語標記が車軸様となっているものが多い.車軸は中心の部分をさし放射状に広がる部分のことを指すわけではなく,正式には車輻(中心から車輪の輪に向かい放射状にのびる細い棒のこと)というのが正しいと考えられる.lateral shadowとlateral wall echo:用語集では,lateral shadow(外側陰影):腫瘤などの側面より後方に延びる音響陰影,lateral wall echo(側面エコー):腫瘤などの左右側面からのエコーとしている.しかし圧倒的にlateral shadowが用いられることが多く,本来shadowという用語を用いる場合は超音波が透過し難い組織の後方にエコーが減弱あるいは消失した領域がある場合を指すが,陰影となるほどの所見が無いのに用いられていることが多い.halo:ハロー(辺縁低エコー帯)肝細胞癌などでみられる腫瘤などの辺縁(周辺)環状低エコー帯.もともとは乳腺領域で腫瘍の境界部に認められる高エコーの反射暈をさす.肝細胞癌でみられる低エコー帯は必ずしも線維性被膜のみではなく周囲の細胞の圧排なども含まれるため乳腺で用いるような反射暈で用いるとすると辺縁という言葉は腫瘤の境界の内側部分を指すため正しくは周辺低エコー帯となる.転移性肝癌で見られる場合と成因が異なるが外側が低エコー帯にみられるときにhaloや厚いhaloなどといい使用されていることもある.
【まとめ】
肝腫瘍の用語にはそのものの語源を確認しないと適切に使用していない場合も存在することがあることが確認された.特に用語としては超音波の特徴を加味した言葉を正しく使用することが理想であると考えられ今後の超音波の普及と共に医用超音波用語集の充実も学会主体で行なっていくことが重要であると考えられた.