英文誌(2004-)
ワークショップ
ワークショップ4
乳腺領域における腫瘤像を形成しない病変の超音波診断 ‐腫瘤像非形成性病変の概念を理解するために‐
(S270)
腫瘤像非形成性病変:乳管の拡張を主体とする病変
Non-mass forming abnormality of the breast, abnormalities of the ducts
東野 英利子
Eriko TOHNO
筑波大学臨床医学系放射線科
Dept. of Radiology, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba
キーワード :
【目的】
腫瘤像非形成性病変の診断基準を明確にするために,その分類と定義をすること.
【方法】
日本超音波医学会腫瘤像非形成性疾患ガイドライン検討小委員会で討議した.
【結果】
定義:乳輪を超える乳管の拡張,壁および内腔の異常.(乳輪を越えない,無エコーの乳管は認識されても正常範囲である.)乳管の拡張を主とする病変を以下のように分類し診断する.症例を提示して解説する.診断:多腺葉にわたる場合は良性のことが多く,単腺葉に限局する場合は悪性の可能性が高くなる.1.乳管拡張のみ1)多腺葉にわたるもの:正常または良性であることが多い.乳管拡張症で見られるが,高齢者では正常範囲と考えられる場合もある.2)単腺葉に限局:異常乳頭分泌がない場合にはほぼ良性である.血性分泌を認める場合には増殖性病変を疑い,悪性の可能性もある.2.乳管内にエコーを認めるもの1)充実性エコー:多腺葉にわたる場合は良性のことが多い.乳腺症(乳管乳頭腫症など)を考える.単腺葉の場合,充実性部分の立ち上がりが急峻な場合は乳管内乳頭腫,なだらかな場合はDCISの可能性が高くなる.鑑別には点状高エコーやバスキュラリティなどの参考所見も役に立つ.固まった乳管内容物などが真の充実性部分と区別が難しい場合がある.2)流動性エコー:乳汁,血液,膿汁などによる.乳汁の場合は通常多腺葉である.単腺葉の場合は乳管内乳頭腫,DCISを疑う.3.乳管壁の異常:乳管壁の肥厚や乳管の広狭不整をいう.DCIS,乳管内乳頭腫や乳腺症などを疑う.乳管の拡張を主体とする病変の鑑別診断法は表のようにまとめることができる.