Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ3
血管エコーにおけるドプラ法の有用性

(S267)

Vector flow mappingを用いた大動脈−腎動脈血管分岐部血流構造の解析の試み

Vector flow mapping technique in human aorta-renal bifurcation

山本 徳則1, 青木 重之1, 小出 直史2, 舟橋 康人1, 佐々 直人1, 吉野 能1, 安東 美恵3, 舩戸 宣行3, 服部 良平1, 後藤 百万1

Tokunori YAMAMOTO1, Shigeyuki AOKI1, Naoshi KOIDE2, Yasuto FUNAHASHI1, Naoto SASA1, Yasushi YOSHINO1, Mie ANDO3, Noriyuki FUNATO3, Ryouhei HATTORI1, Momokazu GOTOH1

1名古屋大学医学部附属病院泌尿器科, 2名古屋大学医学部生化学第一, 3アロカ株式会社メディカルシステム営業部

1Urology, Nagoya University, 2Department of Biochemistry, Nagoya University, 3Medical System Sales Department, ALOKA CO., LTD.

キーワード :

腎動脈硬化の頻度は最も腎動脈入り口頭側が生じ易いことが剖検所見から知られている(Debeky).この部位は動脈硬化の頻度が高く,その進展において腎血管性高血圧を呈する臨床的重要な部位でもある.そこで全身麻酔下開腹腎手術時20MHz超音波パルスドプラ血流計を用いヒト腎動脈分岐(n=10)の血流プロフィルを測定・評価した.図1はその測定部位を示している.血流プロフィルの縦軸は血管径方向,横軸は時間と流速を併せて示している.血管径や分岐角度などかなり個人差があるが,血流速度プロフィルの本質的特徴は,分岐形状に関係なくほぼ一定したパターンを呈していた.腎動脈硬化の好発部位は分岐中枢頭側であるが,血管分岐直後の血流構造を示すと図2のようになる.図2上側が頭側,下側が尾側である.なお,拡張期は低速度であるのでほぼ収縮期のみの血流プロフィルを示している.図3は一心周期での各時相(ABCD)での速度ベクトルを示す.腎動脈長軸に対して60度と90度からの測定速度をベクトル合成したものである.どの時相の合成したベクトルも逆流成分を含め尾側壁方向に向かっており尾側に比し頭側は明らかに相対的に低ずりであることが明かである.腎動脈硬化の好発部位の分岐中枢頭側入り口では逆流の存在が特徴的である.これは,同部位での流れの剥離を意味する.さらに,この部位で流れのパターンを一心周期でみるとこの逆流成分と順流成分が存在し時間的振動性を有することとなる.次に体外から超音波装置で同部位の血流信号をColor Dopplerモードで記録し,vector flow mappingプログラムを用いて血流表示を試みた(Aloka Prosound α10).正常パターンとして32歳男性腹部大動脈から分岐する腎動脈の血流をベクトル表示する.まず,収縮早期に大動脈に流入する血流が確認され(図①),次に大動脈から腎動脈へ向かう血流が確認された(図②).その後,大動脈からの流入血流が減少し,腎動脈分岐直後の腹側に渦状の血流がベクトルにより確認された(図⑤).収縮末期には腎動脈内にわずかに残る血流が示され,血液のよどみが表示されているものと推測された.腎動脈硬化の発症,進展において大動脈−腎動脈の複雑な血流パターンが脂肪代謝や低酸素状態を介して関わってるものと推測される.vector flow mappingプログラム技術は臨床における末梢血管においても複雑な血流パターンを非浸襲的に評価可能するツールとして期待される.