Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ3
血管エコーにおけるドプラ法の有用性

(S266)

リニア型探触子における連続波ドプラ法による最大血流速度測定の有用性

Usefulness of a linear model probe with contineous wave Doppler for measurement of the maximum flow velocity in patients with peripheral vascular stenosis

山本 哲也1, 松村 誠2, 大竹 章文3, 渡邉 哲夫3, 三村 優子1, 三原 千博1, 数野 直美1, 岡原 千鶴1

Tetuya YAMAMOTO1, Makoto MATUMURA2, Akifumi OOTAKE3, Tetsuo WATANABE3, Yuuko MIMURA1, Chihiro MIHARA1, Naomi KAZUNO1, Chizuru OKAHARA1

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科, 3アロカ㈱メディカルシステム技術部システム1課

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 3System Engineering Section I Medical System Engineering Dept., ALOKA CO.,LTD.

キーワード :

【はじめに】
連続波ドプラ法はセクタ型探触子の機能の一つとして高速血流検出の際,広く利用されている.しかし末梢血管エコー検査で用いる場合,リニア型探触子からセクタ型探触子へ持ち変える手間がかかり,セクタ型の分解能がリニア型より劣ることや近距離での視野が狭いことなどから病変部位を同定するのに時間を要する問題もある.連続波ドプラ法を使用できるリニア型探触子をアロカ株式会社と共同開発し,臨床的有用性について検討した.
【対象】
末梢血管エコー検査において高速血流が検出された34例.男性22例,女性12例,平均年齢は69歳.高速血流検出部位は頚動脈病変9例,下肢動脈病変8例,透析シャント14例,その他3例であった.
【方法】
リニア型探触子を用いてパルスドプラ法による最大血流速度2.0m/secを超える高速血流検出部位に対し,角度補正をしない状態でパルスドプラ法(リニアPW)と連続波ドプラ法(リニアCW)による最大血流速度を測定した.次にセクタ型探触子を用いて同部位を同定した後,連続波ドプラ法(セクタCW)による最大血流速度を測定し,それぞれの最大血流速度と測定時間を比較検討した.使用装置はアロカ社製プロサウンド α7,探触子はセクタ型探触子UST-52105(1.5-4.3MHz)とリニア型探触子UST-5412(4.0-11.0MHz)を使用し,至適断面の設定や装置条件の調整はそれぞれ最適な状態とした.
【結果】
1.最大血流速度の相関性リニアCWで測定した最大血流速度はセクタCW及びリニアPWと高い相関を示した.
 1)リニアCWとセクタCWの流速比較(血流速度250cm/sec以下群)相関係数r = 0.85
 2)リニアCWとリニアPWの流速比較(血流速度250cm/sec以下群)相関係数r = 0.89
 3)リニアCWとセクタCWの流速比較(血流速度250cm/sec以上群)相関係数r = 0.90
2.最大血流速度の平均値の比較
最大血流速度2.5m/sec以下群ではリニアPW(189.1±35.3m/sec)<リニアCW(204.7±47.9m/sec)<セクタCW(223.8±48.9m/sec)の関係を示した.また,最大血流速度2.5m/sec以上群でも同様,リニアCW(346.5±41.6m/sec)<セクタCW(364.4±46.6m/sec)の関係を示した.
3.血流速度測定時間の比較
リニアCWの平均時間は49.1±27.0秒でセクタCW108.6±30.8秒の半分以下であった.
【考察】
同一症例においてPWよりCWの最大血流速度が高値を示し,リニア型よりセクタ型の最大血流速度が高値を示した理由としては,超音波ビームの太さの違いによる影響と考えられる.また探触子の大きさ,形状がリニア型よりセクタ型の方が血流方向に対するビーム入射角度を小さくするのに有利である.以上のことから最大血流速度の平均値がリニアPW<リニアCW<セクタCWの関係を示したと考えられる.しかし,高速血流部位を描出しながら短時間で測定できるリニアCWに対し,不鮮明なモザイク血流を目印に探りながら測定するセクタCWでは,正確な高速血流ジェットを確実に捉えているかは不明である.
【結語】
リニア型探触子を用いた連続波ドプラ法での最大血流速度の測定は有用であり,検査を短時間で行う上でも有効性が高いと考えられる.