Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ2
胆・膵・消化管疾患における造影エコー法の位置づけ

(S264)

急性腹症診断における造影超音波検査の有用性

Contrast-enhanced ultrasonography in acute abdomen.

今村 祐志1, 眞部 紀明1, 畠 二郎1, 春間 賢2

Hiroshi IMAMURA1, Noriaki MANABE1, Jiro HATA1, Ken HARUMA2

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学内科学(食道・胃腸)

1Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Gastroenterology, Kawasaki Medical School

キーワード :

【背景と目的】
急性腹症は迅速な診断と治療が求められる疾患群であるが,その診断は困難を伴うことがある.急性腹症の診断において造影CTの有用性が報告されているが,超音波用造影剤は肝腫瘤性病変に対してのみ保険適応となっている.造影超音波検査の急性腹症診断における有用性を検討した.
【対象と方法】
対象は平成19年3月から平成21年11月までの間に,急性腹症のうち壊疽性胆嚢炎,壊疽性虫垂炎,消化管虚血,上部消化管出血,壊死性膵炎,出血性膵嚢胞,肝損傷,脾損傷,消化管穿孔が疑われて造影超音波検査を施行した224例である.使用装置は東芝Aplio SSA-770AおよびSSA-790A.虚血あるいは出血が疑われた症例に対しては,ソナゾイドTMを0.015ml / kgBWワンショット静注し,低出力ハーモニックイメージングで約2分間観察した.消化管穿孔が疑われた症例に対しては飲料水で希釈したソナゾイドTMを消化管腔内に注入し,同様に低出力ハーモニックイメージングで観察した.臓器虚血の診断は,対象臓器に造影剤流入がなく染影が認められない場合を陽性と判断し,臓器出血は造影剤の血管外への漏出が認められる場合を陽性と判断した.消化管穿孔の診断は,造影剤の消化管外への漏出を認めたものを陽性とした.壊疽性胆嚢炎,壊疽性虫垂炎,消化管虚血,上部消化管出血に関しては,最終診断と比較して正診率を算出した.壊疽性あるいは消化管虚血の最終診断は,手術所見あるいは手術標本の病理所見とし,手術が施行されていない症例は保存的治療で軽快した場合は壊疽あるいは虚血がなかったと判断した.消化管出血の最終診断は,直後に施行した内視鏡所見とした.なお,本研究は当院倫理委員会の承認および患者からのinformed consentを得ている.
【結果】
全例で造影剤投与による重篤な副作用はみられなかった.胆嚢炎症例(31例)では感度80%,特異度82%,虫垂炎症例(25例)では感度90%,特異度87%,消化管虚血疑い症例(116例)では感度92%,特異度96%,上部消化管出血症例(44例)では感度60%,特異度100%であり,全体的には感度83%,特異度95%と良好な結果が得られた.消化管穿孔症例では,free airを認めるものの,造影剤の消化管が胃への漏出を認めず,被覆穿孔と診断し,保存的治療で治癒した症例も経験した.
【考察】
急性腹症症例において腎障害の不安なく造影剤を使用できる点は超音波用造影剤の利点である.今回の検討から,造影超音波検査は組織の血流状態を評価することが可能であることが示されたが,ドプラ法では困難であり造影超音波検査の有用性が示された.また,希釈した造影剤の消化管内投与など新しい使用法が,急性腹症の診断に有用であると考えられた.
【結語】
造影超音波検査は急性腹症診断において有用な検査である.