Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ2
胆・膵・消化管疾患における造影エコー法の位置づけ

(S263)

進行消化器癌における造影超音波による腫瘍血流評価

Evaluation of tumor vascularity in gastrointestinal cancer by Contrast enhanced ultrasonography

大川 尚臣, 野上 浩實, 小畑 卓司, 金川 泰一朗

Takaomi OKAWA, Hiromi NOGAMI, Takuji KOBATAKE, Taiichiro KANAGAWA

医療法人野上病院外科

Surgery, Nogami Hospital

キーワード :

【目的】
造影超音波検査は肝臓の腫瘤性病変の診断に適応であるが,近年臨床研究として肝臓以外の臓器にも使用され,その有用性が期待されている.消化管癌(胃癌,大腸癌)において血管新生と悪性度の関連は数多く報告されており,腫瘍血流評価は重要な要素と考えられる.今回我々は進行胃癌,進行大腸癌における腫瘍血流,微小血管を観察し,病理組織との比較検討を行ったので報告する.
【対象と方法】
2006年4月〜2009年12月までの進行胃癌20例と大腸癌20例の計40例,うち切除症例は胃癌12例,大腸癌18例である.各症例において患者に同検査の十分な説明と同意を得たのち,治療前転移性肝腫瘍検索の際に原発層の血流評価を行った.切除不能症例においても化学療法前後における原発巣の血流評価を行った.使用造影剤はレボビスト15例,ソナゾイド25例で,機種はGE横河,Logic7・E9,4MHzの探触子にて観察した.血流画像は超音波装置のHybrid angioという画像パターンにて腫瘍内微小血管を詳細に観察した.各患者の最も豊富な血流画像と造影剤注入前の画像をコンピューターに取り込み,NIH imageソフトにて腫瘍内血流をdencity sliceにてpixel化し,各腫瘍部分の面積で割ることでスコア化した(Vascular Index:VI).
【結果】
各腫瘍組織において以下の3パターンに血流像が観察された.1.造影効果がほとんど見られない.2.腫瘍の表層側より造影され,次第に固有筋層へから〓膜向って造影される.3.腫瘍が表層より全層が造影される.各々のパターンもスコア化し,VIとともに 臨床病理学的に検討したところ,胃癌,大腸癌ともに血流パターン,VIと深達度および臨床病期の間に相関が認められ,深部浸潤例で病期の進行した症例で血流が豊富である傾向が認められた.分化度においては逆に低分化腺癌,粘液癌症例に血流が乏しい傾向が認められた.今回の低分化癌,粘液癌検討症例では原発層の腫瘍径が大きく,腫瘍の一部では浮腫や壊死が原因で血流が乏しくなっているのではないかと考えられた.T4(SI)症例では深部浸潤部においては隣接臓器(膵,前立腺,腸管等)への血流の交通が見られ,他臓器浸潤の評価にも有用と考えられた.また切除不能症例で腫瘍血流の豊富な症例においては化学療法前後で同検査を施行した結果,有効例で明らかに化学療法後にVIの低下がみられ,効果判定にも有用であると考えられた.
【考察,結語】
造影超音波検査における胃癌組織内血流情報は治療前組織診断や化学療法の効果判定に応用できると考えられた.症例数が少ないため更なる症例の増加検討が必要と考えられた.症例提示とともに考察を加え報告する.