Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ2
胆・膵・消化管疾患における造影エコー法の位置づけ

(S261)

膵嚢胞性腫瘍の診断における造影超音波検査の意義

Usefulness of CEUS for the evaluation of Pancreatic Cystic Neoplasm.

福田 順子, 田中 幸子, 仲尾 美穂, 上田 絵理, 高倉 玲奈, 高野 保名, 井岡 達也, 吉岡 二三

Junko FUKUDA, Sachiko TANAKA, Miho NAKAO, Eri UEDA, Rena TAKAKURA, Yasuna TAKANO, Tatsuya IOKA, Fumi YOSHIOKA

地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター検診部

Dept. Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer and CVD

キーワード :

【目的】
膵癌は殆どの症例が進行癌で診断され5年累積生存率も10%以下で低迷している.高危険群を同定し厳重な経過観察を行うことが早期診断,長期予後改善に結びつくと考えられる.われわれの施設では,Prospective Studyの結果,主膵管軽度拡張(2.5mm以上)と膵嚢胞(5mm以上)がそれぞれ独立した膵癌の高危険因子であること,両者を有する人では27倍のハザード比を示すことを発表してきた(Radiology in press.).そして,このような高危険群の人を対象に超音波検査を主体とした定期検査を行っている.経過中に認められる悪性化を示唆する所見として,嚢胞内・拡張主膵管内の結節や膵実質内の低エコー結節の出現が指摘され,このような場合には良悪の鑑別診断が必要となる.膵癌の確定診断には,ERCP膵液細胞診あるいはEUS下穿刺生検を行うがいずれも侵襲の高い検査法であり,対象を適切に選択する必要がある.膵実質内の低エコー結節像を呈する膵癌が造影超音波検査で造影CTと同様にHypovascularに描出されることは押川らによりレボビストを用いて既に報告してきた(AJR 2002)が,今回は体表超音波検査で,嚢胞内あるいは主膵管内に結節性病変を疑った症例においてソナゾイド造影超音波検査を行い,結節の染影の有無を観察し,侵襲を伴う検査の必要な症例を選ぶに際しての有用性を検討した.
【対象】
対象は膵に嚢胞あるいは主膵管拡張を認め,内部に結節性病変を疑った59例(男35,女24,年齢35-84,平均68才)である.嚢胞内結節が49例,主膵管内結節が10例で,USで疑った結節の最大径は3-26mm(平均10mm).
【方法】
造影剤は肝限局性病変の鑑別ないしは転移性肝癌の存在診断を主目的として文書による同意の上ソナゾイドを使用した.使用機種はLOGIQ7(GE),MIは0.20付近,Focusは関心病変の下端からやや深めに設定,1回の投与量は0.015ml/kg.使用プローブは4C(コンベックス2.0-5.5MHz),9L(リニア4.0-9.0MHz)と3Dプローブの4D3C(コンベックス2.0-5.0MHz).3Dプローブはメカニカル方式で,関心病変を含む膵実質が良好な条件で描出できるスキャン断面を選択し,メカニカル方式のスイープスキャンを行って造影時のボリュームデータ(造影3D画像)を収録した.
【結果】
造影前に結節を疑った59例中37例に染影を認め,嚢胞内あるいは主膵管内結節と診断した.37例中25例にERCPを実施し,11例(44%)が膵液細胞診陽性であった.この中11例中手術を希望しなかった1例を除く10例および膵液細胞診susp.だが嚢胞の増大傾向を認めた1例,MCCを疑った1例に切除手術が行なわれた.結局,造影超音波検査で嚢胞内ないしは主膵管内の結節の存在を指摘した37例中12例に切除手術が施行され,全例がIPMCまたはIPMN由来の浸潤癌であった.切除例12例中CTは12例,MRCPは8例,EUSは7例に実施されたが,結節を指摘できたのがCTは10例(83.3%),MRCPは6例(75%),EUSは7例(100%)であった.膵液細胞診陰性の13例は経過観察中である.結節が染影されずデブリと診断した22例中,壁肥厚を疑った3例にERCPを実施したが膵液細胞診は陰性で,その他の症例についても経過観察中で癌と診断された例はまだない.
【まとめ】
嚢胞内あるいは主膵管内に結節性病変を疑った症例において,造影超音波検査を実施することにより,デブリとの鑑別や複雑な隔壁を有する嚢胞において形状が明瞭になり,結節性病変との鑑別に有用であった.超音波検査は非侵襲性で体に優しい検査であるが,嚢胞内あるいは主膵管内の結節性病変の詳細な診断が可能であり,侵襲性の高い検査での確定診断が必要性な症例を選ぶに際して,造影超音波検査が有用であることが示唆された.