菅野 敦

Atsuhi KANNO

東北大学病院消化器内科

Department of Gastroenterology, Tohoku University Hospital

キーワード :

【背景】
（1）自己免疫性膵炎（以下AIP）の診断において膵癌（以下Pca）との鑑別診断が重要である．（2）第二世代超音波造影剤ペルフルブタン（ソナゾイド）は，微少気泡を共振させその信号を連続的に観察することで血流を評価することが特徴であり，各臓器の画像診断への応用が期待されている．
【目的】
PcaとAIPの鑑別診断におけるソナゾイドを用いた造影超音波の有用性を検討すること．
【対象・方法】
対象は2008年3月から12月まで入院し，ソナゾイドによる造影超音波を施行し得たPca42 例とAIP11例である．Pcaは手術もしくはEUS-FNAにて組織学的に診断し得た症例で，AIPは診断基準に合致し，ステロイドの投与にて膵腫大の改善が確認出来た症例である．診断装置にはALOKA社製α10を使用した．造影時のMI値は0.3とした．ソナゾイド1バイアルを2mlの蒸留水にて懸濁し，0.015ml/kgで静注した．造影の観察は超音波装置内のハードディスクに保存し，後に付属の解析ソフトにてTime Intensity Curve（TIC）を作成した．腫瘤部内にROIを設定し，造影が開始される時の輝度値を0とし，そこから造影された最大の輝度レベルを（1）ピーク値，2分後の輝度レベルを2分値と定義する．ピーク値まで上昇するスピードを（2）ピーク速度，ピーク値から2分値まで徐々に輝度値が消退するスピードを（3）消退速度と定義し，Pca群とAIP群で比較した．両群間はMann Whitney U testで比較した．
【結果】
Pca:AIPの平均値 （1）ピーク値level（63.27:108.37 p＝0.0019）（2）ピーク速度level/sec（9.05:16.22 p＝0.0145）（3）消退速度　level/sec（0.69:1.06 p＝0.0045）で（1）ピーク値（2）ピーク速度（3）消退速度のすべてで有意差を認めた．つまり，自己免疫性膵炎は強く造影され，膵癌は造影されにくい結果であった．
【考察】
ソナゾイドは，通常の造影CTとは異なり，連続的に観察が可能であることから，時間分解能に優れており，TICを描くことが可能であった．TICを描くことで腫瘤の血流を定量的に検討することが可能であり，Pcaの鑑別診断に有用である可能性が示唆された．