Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

ワークショップ
ワークショップ2
胆・膵・消化管疾患における造影エコー法の位置づけ

(S260)

膵疾患に対してソナゾイドを用いた造影超音波検査の検討

Contrast-enhanced sonography using Sonazoid for pancreas disease

中野 卓二1, 橋本 千樹1, 原田 雅生1, 川部 直人1, 吉岡 健太郎1, 西川 徹2, 杉山 博子2, 北原 志穂2

Takuji NAKANO1, Senjyu HASIMOTO1, Masao HARATA1, Naoto KAWABE1, Kentaro YOSHIOKA1, Toru NISHIKAWA2, Hiroko SUGIYAMA2, Shiho KITAHARA2

1藤田保健衛生大学医学部肝胆膵内科, 2藤田保健衛生大学病院臨床検査部

1Department of Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University School of Medicine, 2Department of Clinical Laboratory Medicine, Fujita Health University Hospital

キーワード :

【緒言】
造影超音波検査は,微小気泡からなる造影剤を用いた臓器の血流イメージング法であり,レボビストでは微小気泡を破砕することにより画像を得るため,間欠的な送信で短時間に画像を得ていた.低音圧で微小気泡を破砕せず造影可能なソナゾイドが臨床使用可能となり,膵疾患に対してソナゾイドを用いた造影超音波検査が膵疾患の鑑別に有用であるか検討した.
【対象と方法】
対象は膵管癌54例,自己免疫性膵炎(AIP)5例,Solid-psuedpapillarytumor(SPT)2例,腎癌転移性膵腫瘍1例,非機能性膵内分泌性腫瘍1例,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)5例.撮像装置は,Sequoia512(持田シーメンス),LOGIQ7(GE横河メディカルシステム)を使用.造影剤投与量は0.005〜0.01ml/kg.投与後60秒までを早期相,それ以降5分までを後期相として観察.膵管癌のBモードと造影超音波の比較,染影パターンと病理組織との関係を検討した.また,疾患による造影所見を比較した.膵管癌12例,SPT1例において,Time intensity curve(TIC)を作成し,腫瘍部のベースの輝度からピークの輝度までの差と正常膵実質のベースの輝度からピークの輝度までの差の比(腫瘍部/正常部輝度比)を算出し,病変部と正常部の造影効果の差を定量化した.本研究は当院倫理委員会の承認を得て施行した.
【結果】
ソナゾイドによる造影超音波検査ではフレーム数10〜15/sにて,持続的な観察が可能であった.膵管癌では,Bモードでは54例中5例(9.2%)で病変部と正常部との境界が明瞭に描出されたが,造影検査では54例中26例(48.1%)で境界が明瞭に描出され,境界描出能が有意に向上した(p<0.0001).膵管癌では早期相で膵実質と同程度に染影するが,その後,全例で速やかに染影が低下した.後期相で病変内の一部に点状,線状あるいは斑状の染影を54例中22例(40.7%)に認めた.後期相で染影を認めた9例中3例(33.3%)が中〜低分化型線癌であったが,染影を認めなかった7例には中〜低分化型線癌はなかった(有意差なし).AIPでは,5例全例で病変部は早期に染影され,徐々に染影が低下し,膵管癌とは異なる染影所見を示した(p<0.0001).TICを作成した膵管癌16例において,腫瘍部/正常部輝度比は0.69±0.36であり,腫瘍部の造影輝度は正常部に比較して有意に低下していた(p=0.0117).SPT1例の腫瘍部/正常部輝度比は0.3であった.転移性膵腫瘍は,血流が豊富であり,造影超音波にて早期相,後期相ともに強い染影が観察された.膵内分泌腫瘍は早期染影を認め,周囲より一瞬早く染影され,その後速やかに低下し,周囲膵と同様になった.IPMNでは全例で隔壁と結節の染影を認めた.
【考察】
ソナゾイドによる造影超音波検査では,連続して長時間の観察が可能であり,レボビストより有用であった.膵管癌では,Bモードに比べて,造影検査で境界描出能が有意に向上し,腫瘍範囲の評価が容易になった.AIPでは,膵管癌とは異なる染影所見を示し,鑑別に有用と考えられた.TICによる腫瘍部/正常部輝度比は膵管癌では低下しており,定量化によりさらに鑑別能が向上することが期待された.
【結論】
ソナゾイドによる造影超音波検査は膵疾患の鑑別診断に有用と考えられた.